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2024.01.24

ロイヤル顧客を増やす・美容篇〈第2回〉美容市場の悩める顧客。どうアプローチする?

人生100年時代を迎えたこれからの美容ビジネスで、重要な顧客は誰か。Z世代だけではありません、「マチュア世代」にも注目が集まっています。ブランドの大切なロイヤル顧客となり得るのでは?と考えられているマチュア世代の心身から、アプローチ方法を探ってみましょう。

40代終盤から60代初めのマチュア世代の女性たちは、自分自身や家族の健康を気遣うことが増え、子どもの教育費や老後の貯金などお金の悩みも尽きません。財布の紐も固くなりがちな年代といえます。

そんなマチュア世代にどうやって美容商品を買ってもらうのか? 第一回の記事に続き、ビューティマーケティング・プロデューサーの後藤三彩子さんを迎えて、マチュア世代の悩みを深堀りしてみたいと思います。

前回の記事はこちら
ロイヤル顧客を増やす・美容篇〈第1回〉人生100年、ルッキズムを超える美容顧客たち

マチュア世代は、心身の変化が顕著な時期!

マチュア世代はちょうど女性ホルモンの転換期にあたり、多くの人が50歳前後で閉経を迎えます。

女性ホルモンは女性の健康や美肌、心身の安定を保ってくれるものですが、閉経に伴いこの大切な女性ホルモンは急激に減少。その影響で、閉経の前後10年ほどに該当する45~55歳頃にかけて、女性の心身には大きな変化が訪れます。これがいわゆる「更年期症状」です。

マチュア世代を悩ませる更年期症状にはどんなものがあるのでしょうか。下記に代表的なものを挙げてみます。

<こころの変化>
 ・何事にも億劫になる
 ・気持ちが不安定になる
 ・イライラする
 ・家事の効率が落ちる・ミスが増える
 ・やる気が出ない

<カラダの変化>
 ・ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
 ・首や肩のコリ
 ・頭痛
 ・すぐ疲れる
 ・活発に活動できない
 ・倦怠感がある
 ・うまく眠れない

更年期はすべての女性に訪れるものではありますが、その症状の感じ方には個人差があります。「ほとんど感じなかった」という人もいれば、朝起き上がることすらつらく、日常生活に支障をきたすほど深刻な更年期障害に悩まされる人も。

マチュア世代と更年期に対する意識調査のグラフ出典:一般社団法人幸年期マチュアライフ協会「マチュア世代と更年期に対する意識と行動実態調査」

程度の差はあれ、ほとんどのマチュア世代が更年期症状に悩んでいると考えて間違いないでしょう。

また、更年期とは関係なく、マチュア世代は老眼や足腰の体力の低下を実感し始める時期でもあります。こうした加齢に伴う肉体の衰えも、日常生活における小さなストレスの原因になっている可能性があります。

しかも、マチュア世代はこうした体の不調に加え、仕事や子育て、家族の健康、経済面などさまざまな悩みを抱えている年代です。

過酷な環境で生きているといっても過言ではないマチュア世代の現実を知れば、どんな商品、どんな広告が必要か?そのヒントが見えてくるのではないでしょうか。

マチュア世代の肌は急激に衰える!

マチュア世代は更年期とともに訪れる心身の大きな変化に悩まされている一方で、肌の変化に対してはある程度覚悟ができているのか、身心の不調に比べて肌はそれほど深刻な悩みとしては感じていない人が多いようです。 

しかし、女性ホルモンの減少とともに肌が急激に衰え始め、見た目が大きく変わっていくのもマチュア世代の特徴。

閉経に伴い女性ホルモンが少なくなると、肌にとって2つの問題が生じます。

1つめは、皮脂の分泌量が減り、肌のターンオーバーが乱れ、バリア機能が低下してしまうこと。その結果、これまで通りのスキンケアを続けているのに、いまだかつてない乾燥や肌荒れを感じる人が増えてきます。

乾燥症状がひどい人だと「更年期敏感肌」という状態になり、今まで使っていた化粧品が急に使えなくなったりする場合もあるそうです。

女性ホルモンの減少が引き起こす2つめの問題は、一気にシワやたるみが進んでしまうこと。

その原因は、肌が本来持っているコラーゲンやエラスチンといったハリを保つ成分が減少してしまうから。また、顔面骨密度や筋肉も衰えるため、まぶたや頬が落ち、目尻のシワやほうれい線は深くなり、フェイスラインが崩れるなど、たるみが進んでしまいます。

その他、こめかみ付近や頬の高いところに大きくて濃いシミの出現、黄ぐすみなどの肌悩みを持つ人も少なくありません。 

テレビで久しぶりに見た女優さんに対し、「急に老けた?」「こんなにたるんでた?」などという感想を抱いたことはないでしょうか。それと同じことがマチュア世代の肌には起きてしまうということです。

このような肌の内部からの衰えが進むのと同時に、マチュア世代になると、これまでどういう心持ちで生きてきたか?ということも顔や肌に表れてくるといわれています。

簡単に言うと、いつもニッコリ笑って過ごしている人と、怒ったような表情をしている人とでは、シワやたるみの出方が違ってくるということです。

どんなに生まれつき美しい顔立ちの人であっても、不平不満を持って生きていると、口角が下がったり眉間にシワができてしまったりする。そういう内面が外面の見た目に如実に出てくるのが、マチュア世代なのですね。

一般的に美容商品とは、何らかの悩みを解決するタイプのものが多いことから、急激に肌が変化し悩みが深刻化するマチュア世代は、顧客として注目に値するというわけです。

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マチュア世代にはポジティブな広告アプローチが有効

女性ホルモンの節目にあたるマチュア世代は、心身ともにつらいことの多い大変な時期といえます。

更年期のネガティブな状況を解消するために、多くのマチュア世代女性は、

・病院へ行く
・処方薬を飲む
・漢方や市販薬、サプリを利用する
・睡眠をしっかりとる
・家事や仕事を休み休養をとる
・ストレッチなど軽い運動をする
・趣味や旅行で気分転換をする
・食生活を見直す
・化粧品や美容法を変える

上記のような幅広い行動を起こしています。

病院に行ったり薬を飲んだりするような改善策を実行する人は、一見すると更年期症状が深刻で、とても悩んでいる人のように思えますよね。

ところが、更年期を自覚し、それに対する予防や改善、緩和のためになんらかのアクションを起こしている人は、何も対策を講じていない人よりも精神状態が良く、幸福度も高いということがデータで示されています。

マチュア世代の更年期に対するアクションと幸福度の調査ブラフ出典:一般社団法人幸年期マチュアライフ協会「マチュア世代と更年期に対する意識と行動実態調査」

何をやるにも億劫になりがちな更年期ではありますが、どんなに些細なことでもいいので何かアクションを起こすと幸福度がアップするというわけです。

たとえば、スキンケアやシャンプーなどの美容商材を新しいものに変えてみる、就寝時間を早くするなど生活習慣を変えてみる、心が落ち着く時間を作ってみるなど、自分のために何かをする時間を持つことが推奨されています。

では、そんな悩めるマチュア世代に美容商品を買ってもらうためには、どんなアプローチが有効か?

人生100年時代、40代終盤から60代初めのマチュア世代は、まだ人生の折り返し地点に立ったばかり。とくにいまのマチュア世代には「まだまだこれから!」という心持ちの人が少なくありません。

従来の中高年に向けた広告コミュニケーションとは違い、人生の後半戦を心身ともに健やかに美しく、幸せに生きていきましょうというアプローチが有効です。

具体的には、その商品で悩みを解決できることをアピールするだけでなく、その商品を使った先に得られる“楽しく充実した毎日(人生)”という希望まで伝えられたらベストなのではないでしょうか。

いまのマチュア世代は、若い世代と違って、テレビCMや新聞、雑誌などマスメディアの影響を受けやすい世代です。マス広告も使いながらマチュア世代にとっての理想や憧れなどのポジティブなイメージをうまく提示できれば、商品を買ってもらえる可能性も高まるといえるでしょう。

 

IMG_7600-(2-1)後藤 三彩子 

ビューティマーケティング プロデューサー

一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会 理事

NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会 エキスパート

大手化粧品メーカー、広告代理店などを経て2019年に独立開業。
長年、美容健康分野での新規事業や新商品開発、広告・宣伝・PR、販促や店頭開発などに携わってきた経験より、「身心ともに健やかに美しく生きたい」現代女性の気持ちに寄り添うビジネスのマーケティングやブランディングをサポート。近年は、一般向けに美容セミナー講師やコラム執筆も行う。

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ロイヤル顧客を増やす・美容篇〈第3回〉エイジングケアに賭ける顧客と、商品の選び方

まとめ

マチュア世代は、女性ホルモンの転換期を迎え、心身ともに悩み多き時期にあたります。

ビジネス面からみると、更年期の心身の不調や肌の変化(超乾燥・更年期敏感肌、シワ・たるみ、大きくて濃いシミ・黄ぐすみ)など、さまざまなトラブルに対応した美容・健康商材を展開するチャンスが多いカテゴリーともいえます。

マチュア世代に自社の顧客になってもらうためには、悩みにしっかり寄り添う商品の開発と、より良い未来のイメージを提示するコミュニケーションがポイントとなります。

この記事の著者

COCAMP大人美容部

COCAMP大人美容部は、美容ブランドのマーケティング戦略やコミュニケーションデザインの豊富な経験とネットワークをもつ研究チーム。人生100年時代における美容顧客を研究し、社会に貢献するブランドの活動と体験価値について情報発信を行っています。
<写真左から>
柳 恵理 (株)大広 第3ビジネスデザイン局 部長
原田 裕美 (株)大広 ソリューションデザイン統括局 COCAMP編集長
堀米 華子 (株)大広 ブランデッドダイレクト局 クリエイティブディレクター/アートディレクター ※所属は2024年6月現在