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2024.10.03

Z世代の金融リテラシー 彼らを動かすアプローチとは?

Z世代の金融リテラシー

デジタルネイティブ世代であり、社会に次々と新たな価値観をもたらしてきたZ世代。従来どおりの方法では彼らとコミュニケーションが図れない、という課題を抱えている企業も多いかもしれません。今回のテーマは「金融」。やがて社会の中心となっていく彼らは、金融をどうとらえているのか。彼らのインサイトに即した新しいアプローチとは、どのようなものなのか。Z世代のリアルな声を集め、多様な切り口から調査・研究を行っている大広若者研究所D’Zlab.(ディーズラボ)にお話をお聞きし、彼らの意識と本音に迫ります。

 

ikedathumbnail_image池田 龍人

大広若者研究所 D’Zlab.所長

1997年生まれの等身大のZ世代として、Z世代の感覚や価値観、トレンドをリアルタイムで捉え、大広若者研究所D’Zlab.に所属し研究中。本務では、幅広い業界において、戦略立案からプロモーション企画に至るまで、コミュニケーション戦略の立案に従事しています。


使う/使わない、興味がある/ない…Z世代のお金事情・お金意識とは?

――Z世代は、1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代ですが、彼らのお金の使い方に何か共通した特徴はあるのでしょうか。

「メリハリ消費」というのはよく言われているところです。全体としては安定志向で節約傾向にあるものの、自分の好きなものや趣味、そしてここ数年で市民権を得たいわゆる「推し」に対しては比較的積極的に消費する傾向があります。また、SNSをはじめとして何らかのコミュニティに属している人が多いですが、コミュニティ内での体験や発信のために、ある意味で投資的なお金の使い方をする傾向もあります。また、モノよりもコト・体験に対してお金を払いたいという意向も強く見られますね。

 

――自分にとって必要なものを見極めてお金を使っているわけですね。

Z世代は情報リテラシーが高いので、不必要な消費をしない傾向はありますね。しかし一方で、TikTokやインスタグラムのリールなど、SNSで紹介されているものを魅力的だと思うと、直感的に購入してしまう、という側面もあります。

 

――情報リテラシーの高さとは矛盾しているようにも感じますが…。

その場合に重要なのは、誰が発信しているか、ということです。価値観やライフスタイルに共感しているインフルエンサーや、その発信を信頼してずっとフォローを続けているような人が紹介することで、その情報も含めて価値を感じるのだと思います。

 

――Z世代が育ってきた社会背景は、お金の使い方にどのように影響しているのでしょうか。

そうですね。Z世代は、生まれてから景気がよかったことが1回もないんです。だから、何かあったときのために蓄えが必要だと思っているし、将来的にもしっかりと資産形成することが必要だと――いざというときにお金がないと不安だという潜在的な意識というのはあると思います。

 

――潜在的というのは…

Z世代はまだ若くて経済力も高くはないので、資産形成のために具体的に行動している人は多くありません。しかし、Z世代もアッパー層は20代後半。結婚や出産によるライフステージの変化や、転職も視野に入ってきます。将来を見据えて自分のインカムをどうするかは、けっこう切実なテーマなんです。新NISA開始のタイミングで投資を始めた世代は、XYZの中ではZ世代が最も多いというデータもあるようですが、きっかけがあれば行動を起こしたいと考えているのだと思います。

 

Z世代と金融機関との接点はどこにある?

――金融に関する知識についてはどうでしょうか。積極的に情報収集しているのでしょうか。

自力で生き抜くためには「お金に関する知識が必要だ」とは思っていますが、一方で、そうした情報について詳しくない、自信がない、という意識もあるようです。情報入手についても、金融機関やニュースなどから積極的に情報を得るというよりは、その分野に詳しいインフルエンサーだったり、実際に投資をしている友人の話を聞いたりすることの方が多いようです。

Z世代の金融リテラシー1

(図表1)大学生の金融リテラシー①お金の知識は大切

 

Z世代の金融リテラシー2

(図表2)大学生の金融リテラシー②金融に関して自信がない

 

――金融情報との接点も、金融機関との接点も、あまりないということですね。

そうですね。たとえば銀行口座にしても、学生時代に最初につくった口座をそのままメインにしている人は少なくないです。電子マネーやスマホ料金の引き落としなど、いったん口座に紐付けてしまうと、少し使いづらさを感じていても、なかなか変えられない。手続きが面倒ですから。つまり、金融機関からすれば、学生のうちからつながりを持ってもらうということがとても重要になるし、ユーザーからいえば、学生時代にもっと将来的な見通しを持って口座選びができればよかったのに、と後から思うことになる。

 

――どの金融機関がどんなサービスをしていて、自分にどんなメリットがあるか、というような情報の比較検討は、あまりできていないということでしょうか。

はい。そもそも、銀行口座を開くにしても、クレジットカードをつくるにしても、自分で一次情報を調べて比較検討して決定する人は少ないと思います。期間限定のキャンペーンがあってポイントが多くつくから、とか、友人や家族、インフルエンサーが薦めていたから、という、どちらかというと消極的な選択になっている。「自分にとってこんなメリットがあるから、この金融機関で口座をつくる」というような、積極的な選択ができれば、金融機関とのかかわりも、もう少し自分事になっていくのではないでしょうか。

 

情報発信は、「信用する人」経由で、「リアルな接点」を掘り下げて、「忘れる」ことを前提に

――金融機関も様々なルートで情報発信をしていると思いますが、Z世代に響く発信方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

Z世代には20代後半の社会人から高校生までが含まれていますから、社会的背景やおかれた環境にはかなりの差異があります。ひとくくりにするのは難しい部分もあるのですが、友人や家族、信頼しているインフルエンサーからの口コミを重要視する傾向は強いと思います。ですから、そのルートを通じて情報を発信できれば効果的でしょう。どの集団にもオピニオンリーダー的な人、情報感度の高い人がいますよね。「〇〇のカフェに期間限定メニューができた」とか、「〇〇の店でキャンペーンが始まった」とか、いち早く情報を入手して、周囲に伝える人。そういう人を見つけて、その人を通して広げていくことができれば、トライブマーケティング的にそのコミュニティに情報を広げることができます。そのためには、「友人に教えたくなるような情報」である必要がありますが。また、クレジットカードをこんな風に便利に使っている、こうやってポイントをためて楽しんでいる、少額から投資を始めてみた…というように、インフルエンサー自身の生活のシーンの中で情報を発信するのも有効かもしれません。

 

――情報を届ける上で、どのようなインフルエンサーが適しているのでしょうか。

フォロワーの数がすごく多くはなくても、その人のライフスタイルや発言が信頼されているような人、フォロワーとの距離感が近い人が、Z世代には効いてくると思います。数百万人もフォロワーがいるメガインフルエンサーや有名芸能人が登場しても、「本当にこの人が使っているのか」と疑ってしまったりしますから。もちろん、マスメディアを使って認知度を上げることも一方では必要なので、そこはチャネルごとの発信方法を考えて組み合わせることが重要だと思いますが…。

 

――伝え方以外には、何かポイントはあるでしょうか。

Z世代の生活に即したインセンティブを設けることも有効だと思います。たとえば、Z世代が買い物をする場所やコンテンツに合わせてクレジットカードのポイント付与割合を高くするとか、引き落としや振り込みなども含めて銀行口座を利用するシーンごとにポイント設定を変えるとか…Z世代がリアルに感じられるメリットがあれば、そのカードや口座は彼らにとって価値あるものになるし、また、人に伝えたい情報にもなると思います。

 

――そのためには、Z世代の行動をよく理解することが必要ですね。

そうですね。買い物をしたりスマホの料金を支払ったりアルバイト代を受け取ったり…本来は金融機関との接点は生活の中にけっこうたくさんあるはずです。私たちD’Zlab.も、調査を通じて多くのZ世代の声を聞いて、そうした接点を発見していくわけです。リアルな接点で、この銀行口座にすれば、このクレジットカードを持っていれば、こんな風に自分にメリットがあるんだ、と実感できることが大事だと思います。そのきっかけの部分を、たとえばインフルエンサーに発信してもらう。ただ、ひとつ留意したいのは、彼らは毎日膨大な情報に接しているので、すぐ「忘れる」ということです。Z世代はデジタルネイティブで情報リテラシーも高いけれど、SNSで流れてくる情報の大半は見てすぐ忘れてしまう。

 

――若い世代でも忘れるんですね。

今見ている動画の23つ前はなんだったっけ…という感じだと思います。だから、それを踏まえて根気強く情報を発信することが重要だし、それを補完する意味で、リアルに金融機関の存在を意識してもらうような施策が必要だと思います。先日、「これからは『フィジタル』が重要だ」という内容の記事を読んでおもしろいなと思ったんです。フィジカルとデジタルを合わせて「フィジタル」なんですが、リアルな生活接点とオンラインを組み合わせた施策がZ世代への情報発信をする上で重要な考え方だと思います。

 

――大広若者研究所D’Zlab.としては、今後、どのような部分を掘り下げていこうと考えていますか。

Z世代のリアルな声を集めることで彼らの価値観を分析し、様々なアウトプットにつなげていくのが私たちのプロジェクトですが、今は大学生に加えて高校生からも聞き取り調査を行っています。社会に出る前の彼らは、ある意味で言葉を選ばず自分の想いや感じ方について話してくれる。たとえば、お金の管理に自信がないから、用途別に口座をいくつもつくって全部なくならないようにしている、という大学生もいました。そういう個別のリアルな声から、新しいアイデアが生まれてくると思っています。

まとめ

Z世代の価値観についての研究はまだまだ進行中とのことでしたが、彼らのリアルな声、リアルな行動を深掘りすることで、ビジネスにおける新たな気づき、新たなアプローチが生まれてくるだろうことがよくわかります。既存の価値観にのっとった方法論ではZ世代に響かない、と感じたら、彼らのホンネに耳を傾けてみる必要があるのではないでしょうか。大広若者研究所D’Zlab.の調査・研究が、ビジネスとZ世代をつないで新しい価値を生み出します。

この記事の著者

池田 龍人

大広若者研究所 D’Zlab.所長

1997年生まれの等身大のZ世代として、Z世代の感覚や価値観、トレンドをリアルタイムで捉え、大広若者研究所D’Zlab.に所属し研究中。本務では、幅広い業界において、戦略立案からプロモーション企画に至るまで、コミュニケーション戦略の立案に従事しています。