株式会社Insight Techが運営する「不満買取センター」には日々、世の中のトレンドや社会情勢を反映した不満の声が寄せられています。
Insight Tech代表伊藤友博氏とCOCAMPとのコラボレーション企画「前略 企業様、なんとかなんない?」では、そんな「旬な不満」を皆さんにお届けしています。生活者の日常生活で生まれる「ちょっとした不満」に注目し、そこから「生活を素敵にするヒント」を見つけ、解決できる企業に届けようという連載です。
不満買取センターの広報部長「ふーまん」がナビゲーターとなり、その月の注目不満から「こんなのあったらいいのに!」「どうにかなんない?」を紐解いていきます。
今月の注目不満ワードは「おせち」です。
2025年1月のトレンドワード
2024年12月30日~2025年1月5日週に投稿が増加したトレンドワードです。
この週は2024年から2025年への年跨ぎの1週間であったこともあり、「年賀状」「福袋」「紅白」「お年玉」「初売り」などお正月に関わる季節の風物詩への不満が多く寄せられました。
加えて、「年越しそば」「お餅」など年越しやお正月を彩る食べ物への意見も増加しました。そしてお正月の食卓の象徴ともいえる「おせち」への不満も目立っています。
おせち料理は、節日(節句)に作られる料理「御節料理」が起源といわれ、 節日のうち最も重要なのが正月であることから、正月料理を指すようになったと言われています。年神様を迎えるときは煮炊きなどを慎むとともに、料理を作る人が骨休めできるようにという意味もあり、冷めてもおいしくいただける工夫がなされています。
先月の「お歳暮」に続き、日本ならではの文化といえる「おせち」。
一年の節目を彩る「おせち料理」にどのような不満が届いたのか早速見てみましょう。
おせちをちゃんとした食事として期待したい
今年の「おせち料理」不満の特徴として捉えられるのが「おせちをちゃんとした食事として頂きたい」という期待から生まれた不満です。昨年までは「おせちは不要」といった意見が多かったですが、今年は「美味しくきちんと頂きたい」という不満が増加しました。
「すぐになくなってしまう」「食べたくないものだけ残ってしまう」「パンフレットの人数分は満腹にならない」「単身用のおせち料理があればいいのに」という意見です。
-
父。放っておくと、おせちをずっと食べてしまう。三が日食べるつもりなのに、一日でなくなってしまうので、食べる量考えてほしい。(20代・京都府)
-
売ってるおせちって量が少なくて1食くらいでなくなる。あとに残るは食べたくもないものばかり。せめて4人家族で3日は持つならあの値段もわかるんだけど量が少なくて高額。(60代・東京都)
-
おせち料理をほぼ元旦に食べてしまったのが不満です。
スーパーは3日からの営業だしインスタント食品や冷凍食品でなんとか食いつなぐしかない。今年は異常な食欲の自分が嫌になる。(60代・大阪府) -
おせち料理、パンフレットには『○人前用』と書いてるけど、その人数があれだけでは満腹にならないだろうと思う。縁起物ものだけど、もうちょっとおかずになるものがほしい。(60代・大阪府)
-
おせち料理、単身者用の詰め合わせほしい(40代・千葉県)
この背景には「季節の風物詩を楽しみたい」という期待だけでなく、「せっかく買ったおせちを存分に味わいたい」「何かと忙しい日々。お正月くらいはゆっくりと美味しいものを頂きたい」という期待の高まりがあるのかもしれません。
コスパやタイパを重視するトレンドがおせち料理への期待変容を促している可能性がありそうです。
おせちを温かく頂きたい
「せっかく買ったおせちを存分に味わいたい」「何かと忙しい日々。お正月くらいはゆっくりと美味しいものを頂きたい」という期待の高まりは更なるおせち料理への期待を生み出しています。
「せっかくなのでおせちを温かくして頂きたい」という期待です。
-
おせちがつめたいこと。温かいおせちも作ってほしい。(40代・東京都)
-
おせち料理。同じ重箱の中温めて食べたいものと冷たいまま食べたいものがいっしょに入っていること。同時にレンジで温められないのが辛い。(50代・香川県)
-
おせちって何日に渡って食べ、縁起が良い食べ物で集められてるが冷えていて美味しくない。一食分のずつに分けて美味しくいただけるおせち風お弁当が欲しかった(30代・岡山県)
「温かいおせちも作ってほしい」という意見だけでなく「温めて食べたいものと冷めたまま食べるものを同じ重箱に混ぜないでほしい」という意見もあり、重箱の中のレイアウトなど、ちょっとした工夫が顧客の満足度を高める可能性がありそうです。また、「一食分に分けたお弁当で頂きたい」との意見も聞かれ、「新年を迎える料理」としてだけでなく「年末年始の寛ぎをサポートしてくれる料理」としての期待が高まっています。
栄養が偏りお通じが・・・
そんな期待の高まりは「おいしさ」だけでなく「体調・ウェルネス」への期待にも広がっています。
「添加物だらけで気になる」「胃がむかむかしたり便秘になる」「野菜が少なく栄養が偏りそう」との不満です。
-
市販のおせちは添加物だらけでしかも美味しくない事。 去年までふるさと納税の返礼品としてもらっていたがやっぱり残るので今年からは本当に食べたいものをできるだけ添加物が少ないものを選んで買い後は自分で作った(50代・東京都)
-
おせち お雑煮 いつもと違う食事だからかずっとお通じが不調(60代・岐阜県)
-
普段の朝食はほぼ毎日同じようなもの食べているが年末年始とか旅行時などのイレギュラーな時はいつもと違うものを食べる。 そうすると胃がムカムカしたり便秘になったり胃腸の調子が悪くなること。今日の朝までおせち料理だったけど 昼から元に戻した(50代・東京都)
-
正月中っておせち料理(好きなものしか食べたがらない)だと、栄養が偏りそう。普段の食事と比べると圧倒的に野菜が少ない。(50代・北海道)
「お正月だからいいや」ではなく、「お正月だからこそ」栄養や体調に対して感度が高くなる生活者が一定存在するようで、「年末年始のお休みで体をメンテナンスしたい」というニーズに応えることがおせち料理の新たな価値を生み出す可能性がありそうです。
おせちって本来お正月をゆっくり過ごすためのものなのに
そして主に家事を担っておられる方(不満会員では主に女性会員)からはこんな声も。
「おせちって本来お正月をゆっくり過ごすためのものなのにちっとも楽じゃない」という意見です。「年末年始くらいはゆっくりしたい」との期待がある中で、お料理の後片付け、お料理以外の家事を担わなければならず、むしろ通常よりも負担感が高まることで疲弊感や家族との不公平感が生まれているご家庭もあるようです。
-
正月1日は、女性が家事をしなくて良いように、前もっておせち料理を準備すると聞いていますが、結局、集まって食べ散らかしたおせち料理の後片付けをするのは、女性。(60代・三重県)
-
おせち料理の由来は、「お正月くらいは女性がご飯を作らずゆっくり過ごせるように」とのことですが、いつもより品数も多く、ご馳走を作る分だけ忙しくて休めないこと。(50代・愛知県)
-
お正月に料理をしたくないからおせち料理を頑張って作ったのに結局夜はすき焼きや鍋になるから私が作ることになる。全然楽できていない。(40代・東京都)
-
時代が変われども、お正月におせちやその他食べるものの段取りをするのはいつも女性の役割で、女性にお正月休みがないこと。みんなが帰るとホッとする。女性もみんなくつろげる休日が欲しい。(50代・香川県)
-
正月のおせち料理。主婦も休むために作り置きしておくものであるが用意するのは主婦であり、楽できているのかどうかわからないこと。(50代・香川県)
-
大掃除もおせち作りも私だけで、旦那は寝てるだけ。(40代・神奈川県)
気持ちよく年末年始を過ごし、幸先良い一年のスタートとするためにも、「年末年始に発生する家事を家族でどうシェアするか」が重要。
「おせち料理」への不満を見ることで、お正月を穏やかに過ごすためのカギが見つかりました。
不満の声のまとめ
2024年1月の注目不満である「おせち」について生活者の不満の声を見てみました。
コスパやタイパへの期待が高まる中で、「おせち不要論」だけでなく「せっかくならおせちを美味しいお食事として頂きたい」という期待が高まっているようです。
そこには、単に「量が足りない」「満腹にならない」という不満だけでなく、「温められるおせち料理が欲しい」というアイデアにつながる意見も聞かれました。
こんな不満を踏まえると、おせち料理には「新年を迎える料理」としてだけでなく「年末年始の寛ぎをサポートしてくれる料理」としての期待が高まっていると言えそうです。
加えて、忙しい日々のなかで、「年末年始は心身を整える時間としたい」と考える生活者も多いようで「栄養の偏りが気になる」「便秘になってしまう」などの不満も。
おせち料理に対して「年末年始のお休みで体調を整えるための食事」という期待が生まれていると言え、おせち料理の新たなビジネスチャンスと言えそうです。
最後に、「おせち料理」を通じて「年末年始の家事分担の最適化」の必要性が見えてきました。今年は9連休となった方も多く、「その期間の家事をどうシェアするか」がご家庭での穏やかな一年のスタートのカギとなっていることが分かりました。
“おせち”への不満を解消したい! なんとかなんない?
不満買取センタ―に寄せられた「おせち料理」に関する不満。そこにはいろいろな「なんとかなんない?」が隠れているようです。今月も「ふーまんの提案コーナー」でご紹介!
ふーまんの提案コーナー
前略 お弁当業界・フィットネス業界様
年末年始休暇に体調を整えるための「食」と「運動」をパッケージにしてくれませんか。
日々の健康の悩みを踏まえた「おせち弁当」と自分に合った「フィットネスプログラム」を休暇中に短期集中でサポートしてくれる「ブートキャンプサービス」があると幸先の良い1年のスタートがきれそうです。(だいたいこの時期、ジムもお休みが多いのですが、社会人は、このまとまった休暇を有効に使いたいんですよね)
前略 おせち仕出し業者様
量は少なくてもいいので「紅白蒲鉾・栗きんとん・黒豆・昆布巻・田作り・数の子・えび・紅白なます」という代表的な縁起物だけが入った「小さなおせち」を作ってくれませんか。元旦の縁起担ぎができたら、あとは、カニでも寿司でもローストビーフでも贅沢な食材を勝手に用意して、盛り上がりたいと思います。あるいは、「小さなおせち」とセットにして、カニやフグや高級和牛をお得に提供してもらえたら嬉しいです。
前略 宅配総菜提供社×配送業者様
一食分のおせち弁当を作ってくれませんか。いつもより高級食材を使ってちょっとリッチなメニューを複数種。入れ物も正月っぽく派手にしてください。それをお正月三が日、毎日、人数分を届けてください。やっぱり出来立てごはんほど美味しいものはありません。それに正月はやっぱり全員がのんびりしたいです。ということで、宅配する業者様とタッグを組んで、なんとか温かい食事を運ぶことはできないでしょうか。
前略 スーパー・流通業界様
せっかくお正月もお店を開けているのだったら、おせち料理やパーティー料理をビュッフェ形式で用意してもらえませんか。お客さんはお弁当パックやお重を持って行って、好きなものを好きなだけ詰めて、量り売りで販売します。足りなくなったら、また入れ物を綺麗にして買いに行けば、量が足りなくなるとか、余らせてしまうという心配もなくなって、三が日に、好きなものを好きなだけ食べられるという塩梅です。
前略 プラスチック模型業者様
何も食べるだけがおせちじゃない。作って、見て楽しむおせちがあってもいいじゃないですか。「バーチャルおせち」の模型キットをつくってくれませんか。お雑煮を食べながら子どもたちとわいわいと楽しく、あるいは一人で精巧に、豪華与(四)段重ねの立派で少々難しいおせちを組み立てるのも、なかなかに正月ならではの贅沢な時間の使い方です。完成したら、お鏡さんの横に置いて飾りましょう。(インスタにあげるのを忘れずに)