株式会社Insight Techが運営する「不満買取センター」には日々、世の中のトレンドや社会情勢を反映した不満の声が寄せられています。
Insight Tech代表伊藤友博氏とCOCAMPとのコラボレーション企画「前略 企業様、なんとかなんない?」では、そんな「旬な不満」を皆さんにお届けしています。生活者の日常生活で生まれる「ちょっとした不満」に注目し、そこから「生活を素敵にするヒント」を見つけ、解決できる企業に届けようという連載です。
不満買取センターの広報部長「ふーまん」がナビゲーターとなり、その月の注目不満から「こんなのあったらいいのに!」「どうにかなんない?」を紐解いていきます。
今月の注目不満ワードは「お歳暮」です。
2024年12月のトレンドワード
2024年12月2日~12月8日週に投稿が増加したトレンドワードです。
この週に寄せられた不満ではクリスマスプレゼントに並んでこの季節の風物詩「お歳暮」が増加しました。
お歳暮と言えば今年1年お世話になった人に対して「今年1年間ありがとうございました。 また来年もよろしくお願いします。」の気持ちを込めて渡す贈り物。
日本ならではの季節の文化であるお歳暮。なにかと忙しい年末、本来なら感謝のしるしであり不満とは無縁に思える「お歳暮」に対して、どのような不満が届いたのか早速見てみましょう。
“お歳暮じまい”したい
今年は新たに「お歳暮じまい」という表現が不満の中に登場しました。「お歳暮を今年で終わりにしたい」という意見です。
ただでさえ年末に向けて何かと忙しい季節なのに、という意見が目立ちました。また、値上げラッシュの影響で負担が増えていることも言及されており、「感謝の気持を伝えればお歳暮というモノは必要ないのでは」との気持ちに至っているようです。
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ただでさえ忙しい季節なのにお歳暮がストレス。年賀状じまいみたいにお歳暮じまいが流行れば嬉しい。(40代・北海道)
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値上げラッシュの影響でお歳暮にかかるお金が高くなっていてびっくり。無理してまでする必要あるのかな。お歳暮じまいしたい。。(50代・東京都)
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お歳暮も年賀状みたいに『お終い』に出来るといいのにやめ時が分からない(50代・青森県)
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お歳暮お中元文化はもう廃止にして欲しい。ついでに年賀状も。そんなことしなくても日頃から感謝の気持ちを伝えてれば必要なし。(40代・東京都)
様々なかたちでのコミュニケーションが可能となり人間関係やお付き合いの仕方、そして感謝の気持の示し方が変わっていく中で、値上げラッシュの影響などもあり、「年賀状じまい」のように「お歳暮じまい」をしたい生活者が増えているといえます。
このような「お歳暮不要論」ともとれる不満はどのように生まれているのか。もう少し細かく深掘りしてみましょう。
いらないものが届き“もったいない”
まず目立ったのは「いらないものが届いてしまい困る」という”貰う側の困惑”です。
大量のりんご、オフィス宛にお米、飲まないワイン。せっかく頂いてその気持ちはありがたいものの、それとは別に「とは言え、困ってしまう」という気持ちが生まれています。
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オフィス宛にお歳暮をいただくのはありがたいが、新米5キロだったことが不満。社員で分けられないし持ち帰る人は重いしなぜこれを選んだのかという疑問しかない。(40代・東京都)
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親戚からのお歳暮は食べたくないのに大量のりんごでがっかり。
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りんごは自分が食べる分だけ、たまに買うのが良いのに、傷まないように食べなければならないので負担になる。(40代・神奈川県)
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お歳暮でワインが送られてきた。我が家誰もワインは飲まないのだが、定番ではない物の時はこちらの嗜好を考えて送って欲しかった。(50代・宮崎県)
お歳暮に限らず贈り物全般に起こり得ることですが、お歳暮は日ごろ親密な方に限らず広くお贈りすることになるため、お相手の好みなどを踏まえることが難しいことが、「もったいない」という”貰う側の困惑”をもたらしています。
冷蔵庫・冷凍庫に入らない問題
このお歳暮の「もったいない」という“貰う側の困惑”はその他にも色々な要因で起こっているようです。
その一つが「冷蔵庫や冷凍庫はパンパンで入らない!」という悲痛な叫びのような不満です。コロナ禍を契機におうち時間の過ごし方についての意識が高まり、加えて忙しい毎日を「手間抜き」したいという期待もあり、冷凍庫が冷凍食品・作り置きの食事でパンパンになっている方が多いようです。最近では、セカンド冷凍庫も注目されており、冷凍庫=日常を支えてくれるもの、という期待が高まっています。もしかすると、生活者は「冷凍庫の在庫管理」に相当な気を配っているのかもしれません。
そのような中で、お歳暮で届く「冷蔵・冷凍」のお品。これは「好き・嫌い」の問題ではなく「冷蔵庫・冷凍庫に入らない」という問題をもたらします。結果として、急いで食べなくてはいけなくなる、あるいはお裾分けの手間が生まれてしまう。これでは日々の「冷凍庫・冷蔵庫の在庫管理」が水の泡になってしまう。
そんな気持ちが先のお歳暮の「もったいない」という“貰う側の困惑”に繋がっています。
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お歳暮で生ものや生鮮食品が送られてくることがあるが、冷凍庫の空き状況もあるし、足の早いものは食べきれなくてお裾分けしたり手間が発生する。こういうお歳暮文化は相手に迷惑になることもあるから早くなくなってほしい文化。(50代・東京都)
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お歳暮で冷凍の品が送られてきたのが重なり、普段からストックしている冷凍うどんが入る余地がなくなってしまった。冷凍の品はなるべく送らないで欲しい。(40代・東京都)
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"お歳暮に冷蔵・冷凍の物を送ってくる人が不満。入らないことも考えて欲しい。いつもぱんぱんに入っていることも考えて常温の物にして欲しい(50代・青森県)
いつ何を頂けるのか分からないお歳暮。それがサプライズで感謝の気持ちにつながる反面、こんな側面でも“貰う側の困惑”に繋がっています。
大きい・重い
“貰う側の困惑”、まだありそうです。届くお歳暮の「物理的な大きさ・重さ」についてです。
一時に多くのお歳暮を受け取られるご家庭では「大きいものばかり」でかさばってしまって困るようです。特に都市部では居住空間が限られる中で大きいお歳暮を置いておく空間がないことが「置けない・部屋が狭くなる」という不満をもたらしているかもしれません。
加えて、高齢化、加えて高齢単身化が進む中で「重いものが届くと家の中まで運ぶのが大変」という切実な不満の声も寄せられました。贈る側の配慮が必要とされていると言えばそれまでですが、ご家庭の住まい方に関する情報は伝えきれていないことも多く、この点については貰う側の状況を理解してもらう仕組みが必要とされていると言えます。
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お歳暮用のギフト品が配送を想定しているのか、かなり大きいものばかりでかさばって困る。幅ばかりとらない商品も用意して欲しい。(30代・兵庫県)
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お歳暮が届いたが、筋力があまりないのに玄関先で重たいギフトをいきなり渡されると焦る。乾燥味噌汁,お茶漬け,おせんべい,抹茶など超軽量なギフトを送って欲しい。(50代・愛知県)
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お歳暮を考えるのに相手がひとり暮らしとか年配の人とか料理しない人など様々で何が良いか考えるのが大変になってきた。夏は、ビールかそうめんか。冬は、ハムか油かなど沢山あっても良いものでも家族が少ないから考えちゃう。考えたからってナイスなアイデアが浮かぶわけでもないし。真面目に悩むからしんどい。胃が痛む。(50代・兵庫県)
ヘルシーで安全なお歳暮への期待
最後の“貰う側の困惑”です。「せっかく健康に気をして注意しているのに」「アレルギーや病気持ちで食べられないものがあるのに」という不満です。ヘルシーで安全な食生活を送りたいという「食の安全安心・健康志向」の高まりがお歳暮にも波及しています。
送り手としては華やぐ食べ物を送りたいという気持ちがあり、それへの感謝は持っている前提で、とはいえ、もう少し健康に良いものにしてほしい、自分の体質に合ったものにしてほしい、という不満もあるようで、これも“貰う側の困惑”に繋がっています。
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お中元お歳暮は菓子類が多いが、この健康思考の世で、ただでさえ同時期に幾つも重なるので、いただいているのに不満を覚えてしまう。健康に良いとされるもので職場で分けられるような、飲み物(青汁、ヨーグルト他)やサプリメントなどを送った方が喜ばれるのでは。デパート側もそういうラインナップを増やすべきでは。(50代・和歌山県)
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お歳暮を頂くのはありがたいが、家族のアレルギーで食べられないものや病気で食べることを控えなければいけないものが届くことがあり、困ってしまう。お気持ちはありがたいのですが・・。(50代・東京都)
こちらもやはり、貰う側側の好みや制約などが伝えられないことによる“ズレ”と言え、こういった情報をスマート且つ安全に共有できるような仕組みが求められていると言えそうです。
不満の声のまとめ
2024年12月の注目不満である「お歳暮」について生活者の不満の声を見てみました。
コミュニケーションが先進化・多様化しお付き合いの仕方や感謝の気持の示し方が変わっていく中、値上げラッシュの影響もあり「お歳暮じまい」をしたい生活者が増えています。
その背景には、決して「感謝したくない」という気持ちはなく、また「負担が大きい」だけではない、以下のような“貰う側の困惑”があることが見えてきました。
■「要らないものを頂いても・・」という困惑
■「冷蔵庫・冷凍庫がパンパン・・」という困惑
■「重くて運ぶのが大変でかさばる・・」という困惑
■「自分にあった食べ物を頂きたい・・」という困惑
このような“貰う側の困惑”があることが2024年12月の不満から見えてきました。このような“貰う側の困惑”は「もしかして自分が差し上げているものも困惑されているのかもしれない」「困惑されないようにしたいけど何をお送りしたらいいのか分からない」という困惑されたくない“贈る側の不安”をもたらしていると考えます。
この不安は「感謝をお伝えしようと思い贈ったけど逆効果なら・・」という気持ちをもたらし「お歳暮じまい」の機運の高まりに繋がっていると言えそうです。
言い換えれば、お歳暮の感謝の気持ちを届けるうえで、互いを思う「配慮」をサポートするような商品やサービスがあれば、きっと次世代型のお歳暮が生まれるはずです。
最後に70代の方から寄せられた不満をご紹介します。
年賀状じまいに続き、最近はお歳暮じまいも静に進行している。残念ながらこれでまたひとつ日本の風情が消えていく。(70代・北海道)
“贈る側の不安”と“貰う側の困惑”を解決する商品・サービスによって、次世代にお歳暮の文化・風情を継承していきたいものですね。
“贈る不安”と“貰う困惑”を解消したい! なんとかなんない?
不満買取センタ―に寄せられた「お歳暮」に関する不満。そこにはいろいろな「なんとかなんない?」が隠れているようです。
“贈る側の不安”と“貰う側の困惑”を価値に変えお歳暮をアップデートするためにどんなアイデアが考えられるのか。今月も「ふーまんの提案コーナー」でご紹介!
ふーまんの提案コーナー
前略 百貨店の商品開発担当者様
お歳暮で寄付する仕組みをつくってもらえませんか。寄付先を選ぶのは受取人ですが、どこにドネーションして、どう世の中に役立っているかのレポートはサンクスメールとして、送り主ともども双方に送られて一緒にソーシャル活動をしたことが可視化されます。カタログギフトのように、寄付先の内容一覧の冊子が届くようにすればいいのでは?年末にみんなでハッピーになった気持ちになりましょう。
前略 ECモール様
どういうお世話になったのか、受取人の趣味や誕生日・性格などの情報を入れると、AIが最適なモノを判断して送るシステムを開発してくれませんか。何が届くか分からないという意味では、いわばお歳暮ガチャです。数をかぎって大当たりお年玉ラッキー・ガチャも用意。ひょっとしたら、5000円のお歳暮がハワイ旅行クーポンに化けて届くかも。となったら流行ると思います。
前略 宅配業者様
転送可能オプションのついた配送プランを「お菓子」や「ジュース」類に設定してくれませんか。もし、受取人が気に入ったものでなかったり、あるいはたくさんもらって保管場所に困っていたりしたら、受取人が宅配員さんに転送を依頼。すると近隣の「子ども食堂」に転送して届ける仕組みです。配送料はちょっと高めになりますが、子供たちの笑顔を想像すると、こんな手軽な社会貢献活動もありかも。という風潮にならないでしょうか。
前略 百貨店の商品開発担当者様
感謝の「ことば」の頭文字を組み合わせた、セット商品を開発してもらえませんか。例えば「ありがとう」なら、あられ、りんごパイ、ガナッシュ、ドーナッツ、ういろう、といったお菓子シリーズ。そのほか缶詰シリーズや生ものシリーズなどで、ウィットの効いた組み合わせをつくってください。「これまでありがとうございました」のセットは、お歳暮じまいに使われるかもしれないので、やめておきましょうか。