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2023.03.09

LTVの向上施策を導き出すカスタマージャーニーマップ

LTV(顧客生涯価値)は、通販事業や新しい事業を検討されている方が参考にする指標で、顧客が一生涯にもたらす利益(売上)金額であると前回記事で紹介しました。(記事:LTVって?なぜ重要?これからの事業に欠かせない知識)今回は、LTVを上げていくためにどうすればいいのか、その考え方と施策について紹介したいと思います。

LTVを高くするための鍵は「クロスセル」

 例えば同じ化粧水を長年ご愛用してくれている人がいるとしましょう。すでに、何度も継続購入いただいているので、LTVの高い、とても有り難い顧客です。その人が、同じブランドの美容液やファンデーションにも興味を持ち、購入するようになれば、もちろん、さらにLTVは高くなっていきます。このようにある商品の購入から始まり、他の商品もプラスして購入していただくことをクロスセルといいます。もともとこのブランドの商品を使っている方ならば、ある程度ブランドへの信頼を持っている可能性が高いと考えられます。全く新しい他社商品を試すよりも心理的な障壁は低いはずです。ぜひ、他の商品をお試しいただいて、購入してもらえるような施策を行いたいものです。

 前回の原稿でもお話ししましたが、新規顧客を獲得するには、相当な顧客獲得コストがかかります。すぐには、利益が黒字化することはありません。ところが既存顧客にアプローチする場合、この大変なコストを抑えることができるのです。コストをかけなければ、当然利益は上がります。新たな継続購入が起きれば、さらに利益は上積みされます。クロスセルが、LTVの鍵を握っているということがお分かりいただけたでしょうか。一般的に事業がうまくいっている企業は、商品のクロスセルが発生しています。また、健康食品と化粧品といった商品のカテゴリーを超えたクロスセルにも及ぶ例もあります。この場合、顧客は、当該ブランドに対しての信頼感がきわめて高く、いわゆるロイヤルカスタマーと呼べる存在になっている可能性があります。

 

クロスセルを生み出すための考え方

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<(株)大広オリジナル資料「クロスセルカスタマージャーニーマップ」>

顧客が商品を購入する際、購入のきっかけと顧客が持っている企業やブランドへのイメージを3つのステージに分けました。まずは添付の図をご覧ください。

①すでに企業/ブランドに対して「認知」「好意」がある状態

②商品の効果効能への期待はあるが、企業/ブランドに対して「認知」がない状態

③お得感だけが魅力な状態

御社は現在どのステージに当てはまるでしょうか、ぜひ考えてみてください。

 

①企業/ブランドに対して「認知」「好意」がある状態

商品の購入者は「企業やブランドへの安心感」で購入を決断しています。「あの会社が作る商品なら大丈夫だろう」「このブランドだから買いたい」など会社やブランドへの良い印象・イメージを持っています。信頼感がある状態といってもよいでしょう。このステージを「絆の都」と名付けます


②商品の効果効能への期待があり、企業/ブランドに対して「認知」がない状態

商品購入の入り口段階では、広告により、「効果効能への期待」で商品購入を決断しています。とにかく商品にフォーカスしているので、企業には関心が向いていません。このステージを「納得の村」と名付けます。


③お得感だけが魅力な状態

商品購入以前の「企業/ブランド認知」、広告の「効果・効能への期待」よりも、お得感で商品購入を決断している。購入者はセールやポイント付与などのタイミングで「お得だ」という理由だけで購入しています。他社へ流れやすい傾向があり、企業側は利益を吐き出しているためメリットがないのが事実です。このステージを「お得感の荒野」と名付けます。

 

クロスセルを促進するための施策

では、クロスセルを促進させてLTVを上げていくにはどうすればいいのでしょうか。購入の入り口の①②③それぞれのステージごとに戦略や施策が異なりますので順番に紹介していきます。


①「絆の都」

重視点:企業/ブランド
COCAMP_column_LTV_2_03_KV 顧客はすでに企業や商品のブランドに対して信頼感がある状態なので、非常に有利なポジションからCRMが始められます。CRMでは、「企業とつながる」コミュニケーションにより、「絆」が生まれて好意がアップ。「この企業からなら、いろいろ買いたい!」とファンになってもらえます。
例えばファンサイトでの交流、イベントの開催、座談会を行ったり、工場見学を実施して技術力をアピールしたり、顧客との関係性を深めていくことが大切です。ブランドを知ってもらうための活動も役に立ちます。目標は同じ商品だけでなく、商品のカテゴリーを越えたクロスセルを生むことで、(図の右側)で、高ロイヤルティ、高LTVの顧客になります。会社やブランドのファンになってもらい、「応援したい」という気持ちになってもらえることを目指します。



② 「納得の村」

重視点:商品
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 顧客は効果効能に期待しているので商品に関心はありますが、企業には興味がない状態です。CRMでは、「商品(成分)啓発」コミュニケーションにより「納得」が生まれると、満足度がアップし、商品のファンになり関連商品まで購入いただけます。しかし、それで終わっていては、LTVは中程度にとどまります。そこから、企業へ興味を持ってもらい、①「絆の都」のステージへ行けることを目指します。そのためには何をすればいいのか。「納得の村」のステージにいる企業は、同商品のランクアップや派生商品、周辺商品の案内に力をいれがちで、自社の思いやブランドについて発信できていないことがほとんどです。LTVを上げていくためには、企業の情報を発信していくことが大切です。企業理念、商品づくりなどの企業のこだわり、社長や社員の方に興味もっていただくことが①「絆の都」のステージにいくための近道になります。


③ 「お得感の荒野」

重視点:お得感
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 商品購入の入り口段階で、お得感に惹かれているだけなので、CRM施策でも常に「お得感」のあるオファーでないと反応してもらえません。企業や商品よりもお得感なので、当然LTVは低いです。
また、安ければいいので、セール期間やポイントアップを狙った顧客が大多数を占めます。他社に流れやすいことも特徴です。企業がセールをしすぎるとどうなってしまうのか。購入の際に「次回も安くなるまで待とう」というインサイトが顧客の中に生まれ、商品や会社のブランドに興味を持たれることなく、さらに定価で購入してもらいにくくなる傾向があります。短期的に売上を上げるメリットしかなく、長期的なLTVにはつながりません。価格だけじゃない、商品の価値を理解し納得してもらうことで②「納得の村」のステージを目指します。さらに企業への興味を持っていただき、ファンになってもらうことで①「絆の都」も目指していくことができます。

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 注意しなければならないのは、どのステージにも「安売りの落とし穴」が存在することです。セールのやり過ぎは、企業自らが、セール時期にしか購入しない顧客を生み出してしまう危険をはらんでいます。

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 そして、とても重要なことですが、ステージを上げていくことは可能です。現在どのステージにいたとしても、最終的にはカテゴリーを超えた商品を継続的に購入してもらう「絆の都」で、ファンになっていただき、高LTVを目指していくのは同じです。

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「クロスセルカスタマージャーニーマップ」の資料ダウンロードはこちら

 

企業の価値まで理解してもらうこと

「企業/ブランド認知」や「広告による商品の効果効能への期待」によって、コミュニケーションのステージは分かれています。それぞれのステージで適切なCRMを着実に実施し、最終的には顧客と企業との絆を築くことがとても大切です。その結果、カテゴリーを超えたクロスセルが可能になり、LTVのさらなる向上を図ることができます。

この記事の著者

折橋 雄一

メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」、顧客育成のプロセス全体を描いた「CRMサクセスマップ」を開発。