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2023.03.29

D2C事業を回復させる打ち手は?顧客の獲得やCRMの、落とし穴と攻略法。

WEBやSNSが普及し顧客と直接接点を持つことが容易になった現在、商品やサービスをダイレクトに販売するD2Cビジネスはますます注目を集めています。中でも比較的新規参入のハードルが低く、独自の価値を提供できる「単品リピート型」のD2C市場は拡大し続けています。

その一方でプレイヤーが増えて競争が激化。売り上げに伸び悩んでいる企業も少なくありません。今回はそうした「単品リピート型」事業が直面する課題と、踊り場から脱却するための施策や考え方を探ります。

1つの商品を長く購入してもらう、「単品リピート型」のビジネススタイル

 単品リピート型」は、簡単に言うと、あるブランドの1つの商品を定期的に複数回買い続けていただく仕組みです。D2Cの対象となる商品は結構幅広いですが、一定のペースで消費される健康食品や化粧品は「単品リピート型」が多い。顧客数×顧客単価の合計が売上金額となり、買い続けていただくことで安定した売り上げを確保できます。つまり、定期購入顧客がどれだけいるかが勝負で、定期購入顧客の数がある程度キープできれば、毎月の売上が安定して見込めます。景気や流通の影響も受けにくいので、中・長期的に安定した売り上げ予測が立てやすく、コントロールしやすい点が単品リピート型のメリットです。

 自社の中で売れ筋の商品があれば、投資を集中し可能な限り低コストで顧客を増やし事業を成長させることが最も手っ取り早い方法です。多くの「単品リピート型」のD2C企業は、この事業モデルで売り上げを伸ばし、早期に事業への初期投資を回収して黒字化を実現。以降LTVの安定した定期購入顧客数を維持しながら、広告プロモーションに投資し新たな顧客を獲得し続けることで事業の成長を図っています。ただ近年はプレイヤーも多くなっているため、サプリメント市場などでもシニアからミドル、さらに若い世代へとSNSなどを通してアプローチを拡大していく傾向。健康食品のダイレクト販売業界の勢力図も、ここ5〜10年の間で激しく変化しています。

受注1件当たりの獲得単価「CPO」は20年前の2〜3倍。プロモーション投資が事業のPLを圧迫

 「単品リピート型」は基本的に買い続けてくれる顧客を増やしていくことで事業が成長するので、定期顧客を一人増やすためにどれくらいのコストがかかるのかが重要なポイントです。この受注1件あたりのコスト(CPO)は、20年くらい前と比べると2〜3倍ぐらいになっており、顧客を増やすコストが上昇し続けていることが事業拡大のネックになっています。顧客数を増やすためにより多くの広告プロモーション投資を行うことは、事業のPLを圧迫することに繋がる。その間、企業は赤字を出すわけですから。事業者としては、定期的に買ってくださる新規顧客をできるだけ安いコストで増やしたいのだけれども、これがなかなか難しい。回収期間も今までは仮に1年買い続けていただくと利益になっていたのが、1年半2年と長くなり、黒字化するのが遅くなる傾向にあります。そうすると広告投資にもお金が回らなくなってお客さんも増えない、という悪循環に陥ってしまいます。一定の売り上げ規模まで成長した企業や、商品に競争力がない事業者様が伸び悩むというのはこういうケースが多いのです。

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CRM活動によって顧客の離脱率はある程度低減できる

 新たな顧客が獲得できなければ、現在買い続けてくれている定期購入顧客が減らないようにすることが大事です。メールやLINEなどのSNSサービス、DM、その他オウンドメディア等を通しての適正な頻度・情報量でのリテンション接触、長期継続購入へのインセンティブ付与といった、十分なCRM活動を行うことで顧客の離脱率はある程度までは低減できます。ただ店頭販売でもD2Cでも、離れていく人は必ずいます。そして現状10%辞める人がいるとしたら、それをなんとか5%に、さらに3%にと減らしていく施策を取り続けなければなりません。

実は既存顧客に効いている新規顧客獲得向け広告

 ダイレクトマーケティングの場合、広告活動が店舗の代わりという考え方です。ですからその広告を見て申し込んだ人は何人だったか、1人当たりの定期CPOはいくらだったかなどを分析していきますが、最近は既存顧客への影響も見ています。新規顧客獲得向けの広告は、その商品を購入している顧客も目にします。すると広告に接触した既存顧客は「自分の選択が正しかった」「良い商品だ」と再認識できる。つまりプライドメンテナンスに繋がって離脱率が下がるのです。これまでは店鋪としての広告制作というコミュニケーションに重きを置いていましたが、最近では既存顧客に対する広告の影響というものもかなり重視してきています。広告メッセージも既存顧客のプライドを損なわない内容であることが大事です。

顧客の傾向を掴んで商品や価値を提供し、クロスセル・アップセルの精度を上げる

 顧客の購入単価を上げる方策として「クロスセル」「アップセル」があります。他の商品も併せ買いしてもらう、併せて購入してもらうことで客単価アップを図るのが「クロスセル」です。「アップセル」においては、現購入商品より購入金額の高い、より上位商品を買ってもらって客単価を上げていきます。最近は、新しい顧客を獲得するのが難しいため、既存顧客の単価を上げていくことに力を入れているメーカーさんや事業者さんは多いです。
 
 しかし健康食品をクロスセルするといっても、健康食品を10個も買う人はあまりいません。アップセルにおいても、5千円の化粧品を買っている人が、良い商品だからといっていきなり月5万円の化粧品を買うことは少ないでしょう。ですから同じカテゴリーの商品だけだといずれマネタリーに限界が訪れます。例えば膝の痛みに効くサプリに加え、足の力がつく機能的なシューズも販売すると、同じニーズで違うセグメントの商品にまで購入動機を広げることができます。かつてはこうしたラインナップの拡充も盛んでした。近頃ではクロスセルの考え方も進み、例えばナイキでは、シューズの販売だけではなく走行データを表示するアプリ「ナイキプラス」を提供しました。スニーカーやウェアだけでは限界がありますが、運動データが残っていくアプリだと自己の記録データを失うというスイッチングコストが生じるので、クロスセルとともに継続意向も高まります。つまり、シューズ購入後も定期的な売り上げを維持でき、顧客との関係も保っていけます。
 
 このように最近は顧客情報を分析し、顧客が他にどんな興味を持っているのかという傾向を掴んで、そこに対して商品や価値を提供することを重視しています。顧客のデモグラフィック分析、購入頻度、購入タイミング、購買商品傾向、自社サイト訪問履歴など顧客の行動データに加え、顧客の性格などの定性データもかけ合わせて推奨商品、推奨タイミングを出し分ける。これによってクロスセル・アップセルの精度を上げています。
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顧客獲得戦略で陥りがちなケース

 同じ商品を売り続けて商品が市場に浸透すればするほど、顧客獲得効率はどんどん悪くなります。これは店頭販売も同じです。お茶や洗剤などの消費財は、成分を変えたりパッケージを変えたり何かしらバリューアップをして消費者を刺激しています。しかし経口摂取による機能と安全性を求められる健康食品などは開発に時間がかかることが多く細かくリニューアルしません。変えられない中で顧客を増やしていくのでますます買われづらい状況が生まれます。顧客獲得でありがちなのが、商品はほぼ同じままで市場内でのポジションをずらすべく、広告での訴求を大きく変えて新たな見込み客、潜在客を掘り起こそうとするケースです。これはあまりお勧めできません。なぜなら生活者の頭に根付いたポジションを変えることは至難の業だからです。ある程度の認知が高まった後は、機能の大幅なアップやガラッとリノベーションをしないかぎりコミュニケーションアプローチ変更だけで新たな需要を掘り起こすことは難しいと言えます。

「自分向けの商品」と顧客が考える年代幅は前後10歳まで。

 そこで顧客獲得の効率を良くし、新たな顧客を増やす戦略として購入者の「年代」に着目することが挙げられます。1つの商品の購入客のコアな年代層は20歳刻みであることが多いのです。例えば顧客の7割が60〜70代という商品があったとします。同じ商品を40〜50代に売ろうとしても、60〜70代向けと根付いている商品は40〜50代からは支持されません。「70代の人が、膝が痛いのでAという商品を飲んでいる」という広告をたくさん見ている40代は、自分の膝が痛くなってもグルコサミンを飲みたいとは思わない。たとえ広告のアプローチを新しくしてもその意識は変えづらく、これは健康食品に限らず幅広い商品にも当てはまることと言えます。

 「自分向けの商品」と顧客が考える年代幅は前後10歳まで。だから40〜50代に売ろうと考えるなら現行の商品ではなく、その年代のニーズを掘り起こしてインサイトを探り、それに合致するようにリニューアルした商品が必要です。つまり年代に特化した商品ラインナップを拡充し、それに合った広告プロモーションを行うこと。20歳刻みで展開することで新たな見込み客・潜在客にアプローチすることができ、顧客獲得効率を改善する可能性が広がります。

D2C業界でも広がる「顧客が顧客を連れてくる」ファンマーケティング。

 定期購入顧客を増やすコストが上がり続けている中、顧客が顧客を連れてきてくれるファンマーケティングは最もありがたい策です。D2Cは店舗がないので基本的にブランドや企業、顧客同士がふれあう機会はありません。ですからリアルな接点でこうした体験を創ることは、ファンを創るうえできわめて重要です。近年広告コミュニケーションだけに頼らない新たな顧客創出手法として各企業で実践が重ねられています。D2Cの業態からすると買い続けてくれる顧客が大事なので、ロイヤルティの高い顧客をいかに作っていくかは店販以上に注力すべきことです。ファンマーケティングは既存顧客のロイヤルティを高め、新たな顧客を獲得していくこともできるので事業的には非常にプラスになります。よくキャンプ・アウトドアメーカーの「スノーピーク」の例が挙げられますが、ファンマーケティングを成功させるためにはさまざまなノウハウやプロセスが必要です。私たちは、今後こうしたファンエンゲージメントを高めるための提案や施策にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

まだまだやれることはたくさんある。その答えは顧客との対話を通して発掘

 「単品リピート型」事業を拡大するために、流出する顧客を減らす、単価を上げる、そして新しい顧客を増やす、というのは最も基本的な考え方です。3つとも手を打たなくてはいけませんが、実はそれぞれにまだまだやりようがあります。社内では煮詰まっているかもしれませんが、実は手口はいっぱいあってどんな手口が必要なのかはその事業者様が抱えている課題そのものを洗い出さないと見えてきません。異なるカテゴリーの商品開発やファンマーケティングなどを紹介しましたが、それをやれば踊り場から脱却できるという意味ではなく、どういった手口が必要なのかは各企業や事業が置かれている状況によっても異なります。
 
 踊り場になればなるほど顧客にとっての価値をもう一度見つめなおすことが非常に重要です。顧客が求めるものは何か、好きでいてくれる理由は何か、今抱えている顧客の実情を知ることがニーズの理解に繋がり、改善策への突破口が開けるからです。そのために必要なのは顧客との対話です。私たち大広はダイレクトマーケティング時代から培ってきた顧客分析のノウハウを生かし、顧客とつながる仕組みや対話メソッドも進化させています。“対話力”を通して商品やブランドの魅力を再構築し、顧客価値を基軸とした事業の成長をサポートさせていただきます。さまざまな取り組みをおこなっていますので、ぜひご相談ください。

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。