一緒につくろう、顧客価値のビジネス。

お役立ち資料 相談する
お役立ち資料 相談する

2023.03.29

CRMの失敗分析を大公開! 忘れてはならない『顧客の3分類』

 通販ビジネスにおいて、「CRMが大事」だと言われ続けています。その理由の一つは、昔と比べてメディア効率が悪くなったから。いまの時代、通販ビジネスをより成長させたいなら、新規顧客を振り向かせることと同等に、既存顧客にいかに長く買い続けてもらうかを考えることは重要になっています。

また、通販ビジネスは、商品を通して顧客と直接つながっていくものでもあります。そうなると、たとえば健康食品なら、長く愛用してもらうことは、つまりその人の健やかな人生に伴走するということにもなります。CRMを通して顧客との関係性をつむいでいくことは、通販ビジネスにおいては、それほどまでに重要なことなのです。

とはいえ、CRMは口で言うほど簡単なものではありません。

そこで今回のコラムでは、多くの失敗事例から得た、CRMの成功確率を上げる方法を紹介します。

なぜ効果がでない?CRMで失敗したケース3選

 「CRMでイイ感じのツールを作ったのに効果が出ない…」
「いろいろなCRM施策を何年もやっているけど、継続率が上がらない…」
通販ビジネスの現場ではそんな声をよく耳にします。

 そこで、過去に失敗したさまざまなCRM施策をもとに、効果が出なかった理由を探ってみました。あなたのビジネスは、下記の失敗したケースに当てはまっていませんか?

●失敗したケース① CRMのターゲットを“難しい人”と認識していなかった!

CRMの効果が出ない場合、“ターゲット設定が間違っている”ことがほとんどです。下記の図は、通販ビジネスの顧客を3つのタイプに分けたものですが、どれがCRMのコアターゲットなのかわかりますか?

crm_01_01

結論からいうと、CRMでまずターゲットにすべきなのは、真ん中の“マヨイさん”です。
マヨイさんは、1度は期待して商品を買って試してみたけど、「コレ続けて意味あるのかな、やっぱりやめようかな」と迷っている人たち。実は、マヨイさんは、1度商品を使ったうえで迷っているので、対応施策の難易度はかなり高くなります。

新規顧客獲得を狙う場合は、興味を持っている人の背中をポンと押すだけで買ってくれますが、マヨイさんはそんなに簡単に継続購入してくれません。

 つまり、CRMは難しい人たちに向けてのコミュニケーションが必要だと認識して、広告を作らなければいけないというわけです。

 ちなみに、上図の“サボリさん”は『初回お試し500円』などにつられて購入した層。ボリュームが多いので狙いたくなりますが、そもそも続ける気がなくやる気もないので、説得する余地がなく、ここを攻めてもうまくいきません。

●失敗したケース② 放っておいても続けてくれる人にメッセージしていた!

“マジメさん”をCRMのターゲットにしてしまうのもよくやりがちな失敗です。

 マジメさんは、商品を「すごくイイ!」と感じ、まじめに使用してくれる、いわゆるファン。CRMツールなどに対しても一番リアクションをくれるので、企業としてはマジメさんの声を拾いたくなるし、もっとコミュニケーションをとりたくなります。

しかし、それがCRM失敗のもと。

マジメさんは放っておいても買い続けてくれるので、継続率を上げるという視点では、費用対効果が良くありません。というのも、マジメさんはもうすでに買えるだけ真面目に買ってくれているから。例えば健康ドリンクの場合、13本ずつ真面目に飲んでいるマジメさんが、110本飲んでくれるようにはならないでしょう。

また、マジメさんとのコミュニケーションを大切にしすぎると、「パッケージの色が気に入らない」「ネーミングを変えて」というような、CRMとは関係のない要求をされる場合もあります。

 そんなマジメさんが重要になるのは、ファンマーケティングや口コミを増やしたいという場合などです。大切なマジメさんには辞めるのを止めようというスタンスではなく、アンバサダーになってもらおう!という気持ちでお付き合いを考えていきましょう。

●失敗したケース③ 動画や最新ツールを使っていた!

CRMの効果を出したいがために、インパクトのある動画や最新ツールを積極的に使った…なんてことはありませんか?

 パッと目を引くツールは効果がありそうに思えますが、CRMの一番主要なターゲットであるマヨイさんにはほぼ効果がないといえるでしょう。

なぜならマヨイさんは、もう商品のことを十分に知ってくれている人だからです。

 マヨイさんは、

  • 買う前に最低限の商品情報は調べている。
  • 実際に使ってみて、いいも悪いもわかっている。
  • もう情報はいらない(おトク情報なら見るけど)

 つまり、“こんなにスゴイ商品なんです!”という動画があっても、マヨイさんは「もう知っているから見なくていいや」という気持ちになる。皆さんもだと思いますが、やらなくてもわかっていることをやるのって・・・面倒ですよね。だから、クリックもQRコードを読み込むのも面倒、たった1分だとしても動画を見るのは面倒…となるわけです。

 実際の現場でも、何度やっても動画再生率が低く、費用対効果も悪かったというケースは少なくありません。世間ではDXが推奨されているのに、通販ビジネス業界であまり浸透していないのは、こうした背景があるからだと考えられます。

 CRMにおいては、いきなりデジタル!ではなく、顧客を理解したうえで、アナログツールも含めて冷静に判断したほうが良いでしょう。

勝てるCRMのコツは、「欲張らないこと」

 通販ビジネスにおいてCRMはとても重要だと言われています。そのため、手っ取り早い方法で、大きな効果を上げたいと思ってしまいがちです。

 しかし、CRMの効果はすぐにはわかりません。ある顧客が3か月継続したことは、3か月経たないとわからないからです。今やったことが1年、2年後に影響する場合もあるでしょう。

 長いスパンで考えなくてはいけないCRM、その成功確率を上げるためには「欲張らないこと」が肝心です。

 では、具体的にはどうすればいいのでしょう?

 前段で紹介した“失敗したケース”をふまえて、勝てるCRMのポイントを3つ挙げてみました。

  • ターゲットの再設定
  • ターゲットの再理解
  • クリエイティブの再設計

 上記の3ポイントについて、詳しく解説していきます。

①ターゲットの再設定

crm_01_01

CRMで効果を上げたい!というとき、どうしてもボリュームの多い“サボリさん”を狙ってしまいがち。また、反応の良い顧客である“マジメさん”にアプローチしたくなることもあるでしょう。

 しかし前述の通り、サボリさんはやる気がない、マジメさんは放っておいても買ってくれるので、費用をかけても意味がない。

 ターゲット設定においては「欲ばらず」に、最もCRMの効果があらわれるマヨイさんを顧客の中から見つけ出し、照準をあてていくのが正解です。

②ターゲットの再理解

次に大切なのは、1度は商品を買って使ってくれた“マヨイさん”が、どんなことで継続を迷っているのかを徹底的に理解することです。

 とはいえ、マヨイさんは迷っている理由をうまく言語化して伝えてはくれません。

 そこで、まずは

  • アンケート
  • 電話での聞き取り調査
  • お客様からのお手紙
  • 座談会

…などから、さまざまな声を集めていきます。

 次に、その声をもとにワークショップを開き、迷っている理由を細かく分析していきます。たとえば、「面倒くさい」と感じた人たちをグループにし、なにが面倒くさいのかを話し合ってもらうのです。

 そうすると「面倒くさい」と思う理由にもいろいろあることが見えてきます。

  • 「続けても効果がないから面倒くさい」
  • 「忙しくて時間がないから面倒くさい」
  • 「飲む(使う)のが面倒くさい」
  • 「パッケージを開けるのが面倒くさい」 …etc

 こうして11つの声をブレイクダウンしていく作業は非常に地味です。しかし、ここをサボると中途半端なCRMツールしか作れず、失敗に陥ります。

 逆に言うと、マヨイさんが迷っている理由を正しく分析・理解できれば、どうすれば態度を変容してもらえるかを考えることができ、継続購入を促すコミュニケーションも自然とわかってくるということです。

③クリエイティブの再設計

マヨイさんをターゲットとしたクリエイティブは、“揺れている気持ちを翻す”設計が重要です。

 マヨイさんの気持ちを整理してみると、

効果を期待して、1度購入した。

→だから、効果を再度言われても響かない。

1度使ったが、続けるか迷っている。

→でも、続ける理由が欲しいわけじゃない。

 上記のようなマヨイさんに対して、

  • ズバリ正論を言うコピー
  • ぐいぐい購入を迫るコピー
  • インパクトのあるビジュアル

…などでコミュニケーションをとろうとしても難しいでしょう。

 そうではなく、CRMにおけるクリエイティブは、顧客が迷っているポイントに共感をし、こういうコトってありますよねというメッセージを、楽しくデザインしていくイメージです。

 たとえば結婚式場のプランナーさんや車のディーラーの営業さんを思い浮かべてみてください。顧客にゴリ押しせず、「こんな曲をかけることもありますよ」「こういうパターンもありますよ」と迷うことに寄り添ってくれます。彼らのコミュニケーションのとり方は、CRMの参考になるのではないでしょうか。

 CRMのクリエイティブに正解はありません。ターゲットに寄り添い、その気持ちを考え抜き、クリエイティブを作る。世に出したあとも、何度も微修正を重ねていく。

 迷っているターゲットに対し、CRMを実施するこちら側も迷いながら試行錯誤を繰り返し、着実に進めていく必要があるのです。



まとめ

 通販ビジネスの経営者に向けて“CRMをやれば事業は成功するという説を耳にすることがあります。しかしCRMの攻略は、そんなに安易なものではありません。新規顧客を獲得するための広告予算をCRMにまわせば売り上げを伸ばせるといった単純な話ではありません。

 CRMは、顧客を知り、その声を11つ精査し、それに基づいたコミュニケーションを組み立て、積み上げていくことで、ビジネスをより成功に近づけていくもの。

 顧客と直接やりとりする通販ビジネスにおいて売り上げを伸ばしていくためには、顧客と愚直に向き合うCRMが今後もずっと大切な施策の1つであり続けるでしょう。

 *「CRMのターゲット設定」に役立つフレームワークシートは、コチラからダウンロードできます。ぜひご活用ください。

「フレームワーク」の資料ダウンロードはこちら

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。