この連載では、CRMサクセスマップを活用して、顧客育成を妨げる「3つの壁」を乗り越え、「落とし穴」を回避し、企業の応援者となるロイヤル顧客やアンバサダーを育成するためのポイントについて詳しく解説していきます。
CRMの全体像をつかみ、皆で共有できる戦略立案ツール「CRMサクセスマップ」。
前回は、その概要と、アンバサダーハリケーンモデルを活用してマインドロイヤルティを縦軸、購買実績を横軸にして、見出した顧客セグメントが核になっているというお話をしました。
2回目の今回からは、いよいよ各顧客セグメントごとにその詳細を解説していきます。
まずは概要のおさらいから、「見込み顧客」と「新規顧客」のそれぞれの顧客の特徴とインサイトについて解説し、丁寧にマップを確認していきます。
前回の記事はこちら
CRMの全体像と戦略が見える・伝わる「CRMサクセスマップ」 【第1回】 顧客の心を描く城下町世界で 、ロイヤル顧客(アンバサダー)育成を追求する
顧客の変化の旅を描く、城下町のCRMサクセスマップ
CRMサクセスマップの全体像
CRMサクセスマップは、イラストで表現していますので、テキストで読むよりも直観的に理解できるのが特徴です。
CRMサクセスマップでは、顧客セグメントをステージとして描いていますので、例えば、見込み顧客セグメント(地面が茶色のゾーン)にいる顧客(旅人)は「見込み顧客」ということになります。そして、見込み顧客が商品を購入して「初回顧客」になると、初回顧客セグメント(地面がグレーのゾーン)に移動します。
以降は同様に、顧客は、リピーターセグメント(地面が緑色のゾーン)、クロスセル顧客セグメント(地面がオレンジ色のゾーン)、ロイヤル顧客セグメント(地面がピンク色のゾーン)へと、移動していくことになります。
それでは、全体像を概観していきます。
まず、城下町の外にいるのが「見込み顧客」です。まだ商品を購入していない、検討中の段階です。
商品の購入に至ると、城下町に入り、「初回顧客」のゾーンに入ります。このゾーンでは「F2(リピーター)の壁」が立ちはだかっています。石垣のように表現したこの壁を突破するためには、「実感への期待の扉」を開けなければなりません。
一般的に、商品を再び購入し、リピーターになるのは全体の30%に留まっており、大きなハードルとなっているのです。
この最初の壁を突破して、「リピーター」ゾーンに入ります。ここでは、「安売りの落とし穴」や「クロスセルの壁」が現れます。「クロスセルの壁」を突破するには、「企業への興味関心の扉」を開けることが必要です。
「リピーター」から「クロスセル顧客」に進むと、顧客は企業の様々な商品を買うようになります。 「クロスセル顧客」には、「ファン化の壁」が立ちふさがり、その壁を越えることで「ロイヤル顧客」へと進んでいきます。
「ロイヤル顧客」は企業と一体化した存在となり、お城の中枢のゾーンに入ります。ここには「ホームページ」、「ファンサイト」があります。また、「顧客データの泉」があり、顧客データが集約されています。
このような城下町で、壁や落とし穴をクリアして、見込み客はアンバサダーに成長していくのです。
「見込み顧客」には良質な口コミで信頼を作る
見込み顧客の特徴
CRMサクセスマップの顧客セグメント別の詳細を解説していきます。
まず、見込み顧客の特徴についてお話しします。
見込み顧客とは、まだ購入をしていない情報収集段階にある顧客のことを指します。これらの顧客は広告や口コミを通じて商品に興味を持ち、情報を収集する段階にあります。CRMの観点から見ると、広告より口コミにポイントがあります。良質な口コミに触れると購入につながり、その後も良い顧客になっていただけます。
従って、良い口コミに触れさせることが重要です。商品レビューや口コミが良くない商品は、購入意欲を下げる要因となります。現在のSNS時代では、多くの人が商品を検索し、口コミを参考にします。そのため、口コミがない商品は魅力に欠けると見られかねません。
実際に使った人の意見や感想は参考になるだけでなく、共感が得られ、信頼されます。その結果、商品に良い印象を持っていただけるようになります。
これからのCRMにおいて、どのような口コミを増やすかが非常に重要になります。
見込み顧客を新規顧客に変えるためには、既存のアンバサダーの良質な口コミが重要です。この良質な口コミを多く発信できる環境や仕組みを構築することが課題といえます。
戦略としては、アンバサダーが口コミを発信してくれないと購入につながらないため、これを意識した取り組みが必要です。以前は認知広告が主流でしたが、口コミとリンクした認知が大切です。広告だけで興味を持たれても、口コミがなければ購入につながりにくいでしょう。
見込み顧客への施策とインサイト
CRMサクセスマップの「見込み顧客」ステージを見ていきます。 マップの最下部の、吹き出しでインサイトが描かれている、地面が茶色のゾーンです。
顧客の吹き出しの言葉は、定量・定性調査等で出現した顧客インサイトのコメントを使用しています。企業担当者の吹き出しの言葉は、メッセージ内容を指します。つまり、企業担当者の言葉=CRM施策内容に対して、顧客が感じるインサイトを表しています。
ここでは、広告を頻繁に見たり、インフルエンサーのコメントに刺激され、「ユーチューバーがいいと言っていたな」「CMをしょっちゅうやっていて気になる」など興味を持っています。
また、友達が紹介してくれるということもあります。
口コミに関しては、伝書鳩がアンバサダーからの口コミを運んでくる姿で描いています。
「インスタでいいねされていて気になる」というインサイトも描かれています。
また、中には、他のブランドのほうが良さそうだと思っている人もいます。
見込み顧客は、城下町の外で、興味を持った人が集まりつつあるという状態になっていますので、ここに口コミ情報がないといけないのです。
見込み顧客の段階で、良質な口コミに触れていただくことが、顧客を増やす上で重要です。マップでは、具体的な口コミ情報が見込み顧客に届いている様子を描いています。
見込み顧客は、口コミが良いとファンサイトやホームページを訪れることも多く、購入前に商品やブランドの情報を得ていることも調査で明らかになっています。
ですので、ファンサイトやホームページをきちんと運用することが非常に重要です。
購入前にそこで情報を得て、初回購入につながることも多いため、しっかりと取り組むべきものです。
「期待」の力で「F2(リピーター)の壁」を攻略。初回顧客をリピーターに!
初回顧客の特徴
次は、初回顧客です。
初回顧客とは文字通り、商品を初めて購入した状態にある顧客のことを指します。通販においては、お試し商品やトライアル商品を利用する顧客も多く、買ったとはいえ、まだお試し感覚でいる段階であったりします。
初回購入時には他社の競合商品を既に使用しているケースもあります。この段階では、商品やブランドに対するロイヤリティはまだまだ低く、企業が発信する情報の重要度も感じにくいでしょう。企業が多くの情報を届けたいと思っても、見てもらえないことが課題となります。
初回顧客に対する目的は、「F2(リピーター)の壁」を越えて次回購入に結びつけることです。
2回目購入の転換率を高めるためには、買っていただいた時の高い「期待値」をいかに維持するかが重要です。そのためには、顧客との接触頻度を増やし、期待値が下がらないようにすることが求められます。
商品を「使う前」、「使っている最中」、「使った後」のそれぞれのタイミングを意識して、届いてほしい情報を届けることが戦略になります。
スキンケア商品を例に挙げると、お客様が商品を長持ちさせようとして少量しか使用しないことがあり、その結果、商品が持つ本来のベネフィットを十分に体感できないことがあります。
正しい使い方を案内し、期待を維持させることが重要です。そういった情報を伝達することで、商品の利用効果を感じてもらい、再購入につなげます。
また、再購入を成功させるためには、商品の価値をしっかりと伝え続けることも重要です。一度ではなく、何度も情報を伝えることで、顧客に商品の価値を理解してもらい、期待を維持してもらうことが求められます。
F2(リピーター)の壁
CRMの最初の大きな壁、「F2(リピート)の壁」についてですが、一般的にも初回顧客の約30%しか2回目(再)購入に至らないと言われています。残りの70%は再購入せずに去ってしまいます。
そこで、初回商品購入後に自社の商品価値やブランドコンセプトをしっかりと何度も伝える必要があります。コストがかかるため、何度も行うことが難しいと思われるかもしれませんが、それを行わないとなかなか30%の再購入率を達成できないことになります。
具体的には、商品購入前にはお礼として「購入ありがとうございます」のメッセージを届け、「すぐ使ってください」と使用促進の呼びかけを行うことは、必ずやっていただきたいコミュニケーションです。意外にお客様は商品を買っても封を開けずに忘れてしまっていることも多いのです。
商品使用中には効果を感じる兆しについての情報を提供し、使用後には次の購入を促すオファーを打ち出すことが戦略となります。
この3つのタイミングでコミュニケーションを計画します。競合商品との比較も含め、商品の価値を実感してもらうことで再購入を促進します。
初回顧客への施策とインサイト
CRMサクセスマップの「初回顧客」ステージを見ていきます。
まず、企業担当者が購入をした方に「ありがとうございます。ぜひ試してくださいね」とお礼を伝え、すぐに試していただくよう促しています。これにより、お客様は「さっそく試してみよう」と使用開始していただけます。
商品の使用中には、「○○成分が入っていて良いですよ」などといった企業からの情報発信を行います。
成分が優れていると知ることで、「他より成分的に良いから試してみよう」という期待感を持ってもらうことができます。
また、会報誌やメール等を通じて、効果の兆しを気付かせるメッセージ「こんなかんじありませんか?」を発信すると、「嬉しい驚き。今までと違う」などと感じていただけるようになります。
そして、商品の使用終了タイミングで「そろそろ使い終わってませんか?」とお知らせをすることも非常に効果的です。これにより、顧客は「サポートがしっかりしているから安心」「しばらく続けてみようかな」というインサイトが生まれ、リピート購入につながります。
また、アンバサダーが、「この商品いいから紹介するね」と口コミすると、「リピーターの人が言うなら間違いないね」と好意的に受け取っていただけます。
このように新規獲得だけではなく、あらゆる顧客セグメントで口コミは有効になります。
さあ、F2の壁を超える扉の前まで来ました。
企業担当者の「私たちは〇〇にこだわってます」というメッセージで「比べてみてもこっちがいいかな」と感じてもらっています。
初回顧客はまだ1回目なので実感というところには至っておらず、あくまで期待感になります。「F2(リピーター)の壁」を突破するためには、最初に感じた期待をスムーズに確認させることが鍵となります。初回顧客は、「まだ実感していないが期待できそうだ」と感じてもらうことで次につながります。
この言ってみれば「ふわふわした状態」で、「もう少し続けてみようかな」と感じさせられるかが重要です。その期待を維持し、継続していただくことが「F2(リピーター)の壁」を突破するポイントです。
こうして、「実感への期待の扉」を開け、2回目購入をして、「リピーター」ゾーンに入っていただきます。
次回は、CRMサクセスマップのセグメント別の詳細「リピーター」について解説します。
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まとめ
・「見込み顧客」が、商品を購入する決め手は、口コミ。アンバサダーによる良質な口コミの創出が必須になる。
・「初回顧客」がリピーターになるには「F2の壁」を突破する必要がある。まだベネフィットを実感するところまでには至らないので、「実感への期待」を感じていただき、壁を突破する。
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