本コラムでは、兵庫で実施された「みらいいパークX」の模様をお届けします。 今回は前回の開催とは異なり、行政や教育委員会が後援に加わることで、地域を巻き込んだ「地域共創・ブランディング・人材育成」のエコシステムを作り上げている点が大きな特徴です。自治体や教育機関と連携した地域活性化や、α世代とその保護者(ファミリー層)への深い事業理解はもちろん、単発の求人にとどまらない「中長期的な採用ブランディングの土台づくり」に課題をお持ちの企業・自治体担当者様には、必見のコラムです。単なるイベントにとどまらない「地域共創型キャリア教育」のリアルと、企業が得られるマーケティング・ブランディング上の真の価値に迫ります。
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2026年8月30日、開場15分前の神戸国際会議場。すでに何組もの家族連れが入場待ちの列を作っています。夏休みもほぼ終わりというタイミングながら、子どもたちは待ちきれない様子で会場前を元気に走り回り、その熱気が開場前から場の空気を温めていました。

事前予約者だけでなく、当日申込みで訪れた家族連れも多く見られます。運営担当者によれば、兵庫県教育委員会からの紙のチラシに加え、神戸市内の学校ではデジタルツールを通じて保護者への告知も行われていたといいます。加えて出展各社もそれぞれの立場で告知に協力しており、行政・学校・企業という複数のチャネルが重なったことが、開場前からの熱気につながったとのことでした。
第2弾となる今回、株式会社miraiiが一般社団法人あそびまなびラボと共催し、神戸新聞社が協力、兵庫県・兵庫県教育委員会・神戸市教育委員会・神戸商工会議所が後援するかたちで実施された「みらいいパークX in 兵庫」。関西電力、住友林業、神戸新聞、兵庫県、阪技、ノーリツ、大広、TOA、大栄環境、ラジオ関西、新井組、みなと銀行など、地域を代表する企業・団体が15のブースを構え、子どもたちに「お仕事」を体験ゲームとして届けました。ここからは、この現場で見えた体験の力についてお伝えします。
みらいいパークXは、子ども一人ひとりの個性を活かした「キャリア教育」と「金融教育」を融合させる教育プラットフォーム「みらいいパーク」のリアルイベント版として、各地域の特色に合わせて展開するキャリア教育のエコシステムです。地域の企業・団体がブースを出展し、ゲームやワークショップを通じて子どもたちがリアルな「お仕事」と出会う、体験型キャリア教育フェスティバルです。
今回は行政や教育委員会が後援に加わったことが大きな特徴です。主催者側は、多くの自治体が抱える「若年層の県外流出」と、教育現場が抱える「キャリア教育の形骸化」という2つの課題に対する処方箋として、このイベントを位置づけています。地域企業の魅力を子どもたちが夢中になれる「ゲーム」としてコンテンツ化し、早い段階で地元企業との接点をつくることで、将来的な地域への愛着や定着につなげる狙いです。
α世代と親の心を動かす「体験型コンテンツ」
会場がオープンすると、それぞれのブースにすぐ長い行列ができました。親子でゲームに挑戦したり、企業担当者から仕事の説明を受けたり——夏休み最後の一日を、思い思いに楽しむ姿があちこちで見られました。


小学生と幼児の3人の子を持つ、あるお父さんに話を聞くことができました。学校で配られたプリントを見て、企業の体験ゲームに興味を持ったのは子どもたちの方が先で、「行きたい」と自発的に言い出したのがきっかけだったといいます。会場に来てみると、想像以上の熱気に「楽しそうで嬉しい」と話してくださいました。ふだん子どもが企業の情報に触れる機会は少ないため、「いろんな会社がある」ということについて親子で会話するきっかけになればと考えていらっしゃるそうです。
特に印象的だったのは、その先に続いた話です。娘さんは「YouTuberや動画クリエイターになりたい」と話しているそうですが、それが本当に娘さんに合っているのか、親としては分からない部分もあると言います。だからこそ、家庭では「他にもいろんな選択肢がある」「いろんな可能性がある」ということに触れてほしいという思いで会話をしている、と語ってくださいました。夢を持つこと自体はとても良いことですが、同時に現実として難しさもあることは、きちんと分かってもらいたいし、伝えていきたい——一人の親としての、率直な思いが伝わってきました。
会場の導線もよく設計されていました。まず入り口近くの診断ブースで「シゴトタイプ診断」を受け、その結果に応じたシールを胸に貼って各企業ブースを回ります。ブースを回るごとにスタンプを集め、最後に景品と交換するという流れです。
さらに景品引き換えブースには、任意で挑戦できる「企業モンスター討伐」という仕掛けが用意されていました。各企業が子どもたちに向けて出した「お題」に、付箋でアイデアを書いて答えるという仕組みです。
- 神戸新聞社:「難しいニュースを子どもにも分かりやすく伝える"面白い工夫"を教えて!」
- 関西電力:「未来にあったらいいな!と思う"新しい発電方法"を教えて!」
- 住友林業:「木をもっと好きになれる"夢の道具"を教えて!」
- 大栄環境:「みんなの掃除の工夫を教えて!」
- ラジオ関西:「聴くだけで絶対に笑顔になれる"楽しいラジオ企画"を教えて!」
- 大広:「大人って本当は〇〇したいんじゃない?と思うことを見つけて!」


企業のロゴが入ったモンスターのイラストに、子どもたちが書いた付箋がどんどん貼られていきます。単に感想を集めるのではなく、子どもたちの発想をお題という形で引き出す設計になっているのが特徴的です。
出展企業の担当者に話を聞くと、「子どもの素直なアイデアを具体的に知れるのがいい」という声が返ってきました。日頃、小学生から直接意見をもらう機会はなかなかありません。そうした柔軟な発想を自社のアイデア出しに活かせれば、経営や事業にも新しい視点が生まれるのではないか——そんな期待感も伺えました。
診断ブースでは、親子で一緒に取り組む姿も多く見られました。子どもがどんな特性を持っているのかを、親も一緒になってゲーム感覚で楽しみながら知っていきます。子どもが本当に考えていること、感じていることを、親として知るきっかけにもなっているようでした。それが堅苦しい「診断」ではなく、エンターテインメントとして体験できている点が、このイベントの巧みなところです。
株式会社miraii代表取締役の福田紘也氏にもお話を伺うことができました。これだけ多くの家族が来場してくれたことについて、関係者への感謝を口にしたうえで、「自分たちが必要だと考えているプロジェクトに、多くの方が参加し、取り組んでくれている中で反応が返ってくることに、確かな手応えを持ち始めている」と語ってくださいました。そのうえで、この取り組みをさらに多くの企業、多くの親子に届けるために努力を続けていきたい、と今後への意欲を示されました。
単なるCSRで終わらない「企業参画の4つの価値」
大広とmiraiiは2025年7月、子どもの個性発見・キャリア教育における業務提携について基本契約を締結しています。両社はこの取り組みを、単なる職業紹介ではなく、子どもたちの内なる想いと企業の存在意義を結ぶ「価値共創の場」と位置づけています。
従来の企業コミュニケーションは、テレビCMやデジタル広告を通じて消費者に「届ける」ことが中心でした。しかし、与えられるコンテンツより自分が選ぶ体験を重視するα世代には、その手法が通用しにくくなっています。みらいいパークXの企業ブースは広告枠ではなく、子どもたちが自分の意思で並んで体験するコンテンツとして機能します。今回、電力・住宅・報道・放送・金融・建設・環境など業種の異なる15の企業・団体が一堂に会したことは、地域における企業の存在感を親子に同時に届ける機会になりました。
さらに今回の兵庫編で見えたのは、体験を届けるだけでなく、子どもの発想を受け取る仕掛けまで用意されていたことです。「企業モンスター討伐」に象徴されるように、子どもたちの柔軟なアイデアを企業自身のヒントとして持ち帰れる設計は、単なる認知獲得にとどまらない参加価値を企業側に提供しています。
ここに、このイベントが持つもう一つの意味があります。α世代とその親に早いうちから直接コミュニケーションを取ることは、企業にとって「未来の顧客に知ってもらう」機会であると同時に、「自社が何者であるかを問い直される」機会でもあります。子どもという、業界の前提や社内の常識を知らない相手と向き合うことで、自社の仕事の面白さや存在意義を、初めて言葉にし直すことになります。日頃小学生から直接意見をもらう機会はほとんどありません。だからこそ、子どもの素直な問いや発想に触れることは、企業側にとって「自社らしさ」を再発見する貴重な機会になっているのです。
本イベントで企業が得られる4つの同時価値
- 体験を通じた「この仕事、いいかも」というポジティブな感情の醸成
- 保護者を巻き込んだ家庭内の会話の喚起
- 地域社会における企業のプレゼンス向上
- そして企業自身の自己理解の更新
これらが同時に起こる場です。
兵庫でも大きな熱気を集めた今回のイベント。行政・教育委員会が後援に加わったことで、企業単体のマーケティング施策という枠を超え、地域全体でキャリア教育を支える仕組みとしての広がりを見せ始めています。みらいいパークXは今後も、全国各地での展開を予定しています。
貴社の「仕事の魅力」を、次世代に届けてみませんか。
みらいいパークXに関する資料はこちら
※本資料は2026年度の出展・掲載プラン(今年度限定特典含む)に関するご案内です。
【お問い合わせ・デモのご相談】
大広 未来共創局 インキュベーションセンターへ、こちらからお問い合わせください。
まとめ
オープン前からできた行列は、「与えられる情報」ではなく「自分で選ぶ体験」を子どもたちが求めていることの表れでした。診断・スタンプラリー・企業モンスター討伐という導線設計は、子どもの没入と保護者の気づき、さらには企業側のアイデア獲得までを同じ場・同じ時間に生み出します。行政の後援を得たことで、若年層の地域定着やキャリア教育の補完という社会的な文脈も加わり、体験型マーケティングは一段と実行性の高い、地域と企業を結ぶ土台へと育ちつつあります。
<編集後記>
私自身も2人の子どもを持つ父親として、日々の何気ない会話の中で「仕事とは何か」「会社とは何か」を子どもと一緒に考えることには、大きな意味があると感じています。
これから企業は、社会の中で自分たちがどのような役割を担っているのかを自ら問い直し、その答えをステークホルダーに向けて説明し、共感を得ながら行動に移していくことが、これまで以上に求められていきます。そのとき、「未来」という視点に立って「今」を見つめ直すことは、自社の本質的な価値を自らの言葉で確かめ直す、大切な営みになるのではないか。今回の取材を通じて、そう確信しました。
日常のささやかな親子の会話が、めぐりめぐって未来の本質に触れている——そうであってほしいと、心から願っています。この取り組みをmiraiiとともに育みながら、得意先企業や行政との連携をさらに広げ、社会に確かなインパクトをもたらすプラットフォームへと発展させていきたいと考えています。
取材・執筆:増田浩一(株式会社大広 未来共創局 インキュベーションセンター)
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