誰もが見たことのある独特な世界観のCMと、梅干しを模したユニークなキャラクター。ノーベル製菓様の《男梅》ブランドは、その圧倒的な認知度の一方で、実際の購買との間のギャップが課題でした。コンペを勝ち抜いた大広チームが提案したのは、明確なコンセプトに基づいたフルファネルのコミュニケーション。知る・見る・食べることを通して多くのユーザーを巻き込んだプロモーションは、どのようなムーブメントを起こし、どのようにブランドを活性化したのでしょうか。大広チームに話を聞きました。
野村 真吾
株式会社 大広
クリエイティブディレクター/コミュニケーションプランナー。
デジタル、CM、イベント、PRなど、手段は問わずに企画制作。
太田 有紀
株式会社 大広
コピーライター/プランナー。
インサイト起点の感情を動かすコピーライティングやプランニングを目指しています。
渋谷から全国へ!「味の認知」を拡げる立体プロジェクト
2026年7月、東京・渋谷を皮切りに、約1か月にわたる「男梅 全国布教行脚2026」は始まりました。キャンデーをはじめとする《男梅》ブランドの味を日本中の人々に知ってもらうためのサンプリングイベントです。会場には男梅のコンセプトや世界観を表現した巨大フォトスポットがあり、CMでおなじみのキャラクター・男梅蔵がリアルに登場。「誰もが知っている “あの”男梅蔵がCMから飛び出して動いている、まずそこで、周囲にいる人が注目してくれました」――そう語るのは、一連のプロモーションを手掛けた大広チームの野村氏。男梅蔵といっしょに写真を撮りたい人たちが次々と集まり、SNSにはその様子が大量にアップされたといいます。
会場には《男梅》ラッピングのキッチンカー「梅丸」がスタンバイ。キャンデーやグミ、シートといった《男梅》ブランドの試食サンプルを配布したほか、大森屋様とのコラボ商品「男梅茶漬」、サッポロビール様とのコラボ商品「男梅サワー」をセットにした有料試食や、《男梅》商品が当たる抽選会、オリジナルキーホルダーのカプセルトイなど、《男梅》の味と楽しさをフルラインナップで体験することができる仕立てに。「《男梅》は、商品名もキャラクターも認知されているのに、食べたことがない、味を知らない人が多いということが課題でした。だから、『知っている』と『食べる』の間にブリッジをかけることが、ぜひとも必要でした」(野村氏)
その「ブリッジ」は、イベントだけにとどまりません。《男梅》の世界観を印象的に訴求する新たなブランドサイトの立ち上げ、CMなど映像での訴求、商品と連動した購買プロモーション(プレゼントキャンペーン)などとあわせた多彩な施策で、商品とユーザーの間を立体的につなぐプロジェクトを展開したのです。



カギは商品の中に。メーカーの「味の極大化」への着眼
大広チームが考え方の基盤としたのは、ノーベル製菓様のものづくりの姿勢、その中にある理念でした。「《男梅》の商品開発について様々な資料を読む中で、特に注目したのが「極大化」という考え方でした。ノーベル製菓様が梅干し味のキャンデーをつくるときに目指したのは、『梅干しが本来持っている味を極大化する』ことだというのです。独自の原料や独自の製法を採用したのも、そのためだと。ノーベル製菓様の企業理念は『夢とロマン』ですが、《男梅》では、『梅干しの味を極大化する』ことでそれを実現しようとしているのだと解釈しました。《男梅》の味には、つくった人たちのそうした思い、ものづくりの姿勢がこめられている。それをきちんと伝えることがユーザーとのコミュニケーションのカギになる、と考えました」(野村氏)。 共にアイデアを生み出したチームの太田氏も、提案当時をこう振り返ります。「実際に《男梅》を食べると、塩味や酸味、濃厚な旨味に至るまで、『たしかに梅干しより梅干しだ!』と驚く。その素直な感動こそ、この商品の価値につながる部分であり、ユーザーに知ってほしいことだ――それがチームの共通した意見でした」(太田氏)
単発イベントから「ブランド全体のタグライン」へ昇華
そうして掲げたのが「梅干しの、その先へ。」 というコンセプト。「商品名やキャラクター、商品の世界観に対する高い認知を、味への興味につなげることが必要です。『極大化した梅干し味』『梅干しよりも濃くて力強い』という味の特徴=商品の価値と、商品名・キャラクターとをつなぐコミュニケーションワードとして、『梅干し味の、その先へ。』 、さらに『梅干しの、その先へ。』と打ち出しました」(野村氏)
実はこのプロジェクト、前年・2025年度のコンペで採用された単発のキャンペーンから出発しています。「キャラクターである男梅蔵が街へ飛び出し、全国を回って《男梅》商品の試供品を配布する=《男梅》の味を布教する、というストーリーは、その時に生まれたものです」(野村氏)。キャンペーンは盛況に終わり、さらにはこのコンセプト構築が高く評価されて、2026年度にはAEコンペで採用。CMをはじめとする映像制作、ブランドサイト構築、購買プロモーション(プレゼントキャンペーン)、全国でのサンプリングイベント(試食キャラバン)など、ブランド全体を網羅したフルコミュニケーションのプロジェクトへと発展しました。


13万人が味を体験!リアル「男梅蔵」が起こしたSNSの拡散
冒頭で紹介したサンプリングイベント「男梅 全国布教行脚2026」は、来場者(試食配布者)の目標10万人に対して約13万人と大きく上回って達成。「初めて食べた。おいしかった」「食べたことのない種類を食べ比べることができてよかった」「今まで食わず嫌いだったけどグミは食べやすかった」「汗をかいたので、梅干し味のおいしさが沁みる」など多くの声が寄せられました。「中には、『男梅味のタブレットをつくってほしい』とか『アイスもあったら嬉しい』という声もあがって、ノーベル製菓様のご担当者も興味深く聴いておられました」(太田氏)
ただ「知っている」から「まず味を知る」「食べてみる」体験をした人たちは、SNSを通じてその発見や楽しさを発信。ユーザー共創型のコミュニケーションによって、《男梅》ブランドに関する活発な発話が広がったことも、プロジェクトの大きな成果だといえるでしょう。
資産を活かす正攻法で、伸び悩みブランドを打開する
大広チームが競ったコンペでは、既存の路線を大きく変えたり、表現上の仕掛けでユーザーの耳目を集めようとする提案も多かったとのこと。それに対して大広チームは、食品である商品の「味」にフォーカスし、既存のキャラクターを全方位的に活かすという、ある意味で基本に立ち返った、正攻法の提案を行いました。
「《男梅》の重要な価値である「味」に興味を持ってもらうことは不可欠な要素です。その上で、実際に食べてみる(体験してみる)ことへ一歩踏み出してもらうためには、男梅蔵の高い認知度を絶対に生かすべきだと考えました」(野村氏) 「イベントの現場にいると、男梅蔵 の人気のすごさがわかります。本当にヒキが強くて、どんどんお客さんを引き寄せてくれる。それがSNSでの発信につながり、プロモーションの大きな力になりました。その様子に、ノーベル製菓様の方々も改めてこのキャラクターの強さ、価値を感じておられたと思います」(太田氏) クライアントからも、商品特徴にきちんと軸足を置いたプロモーション計画が高く評価されたといいます。
イベント後の調査では、「梅干し好き」層での購買シフト率が上がったことがわかっており、プレゼント応募数や試食配布数などとともに、当初設定したKPIは達成。「今後はさらに幅広い層での喫食率や購買シフト率アップのために、新たな施策を提案しようとしているところです」(野村氏)
すでに有名な商品を新たに(もしくは再び)手に取ってもらうためにどうすればよいのか――商品の認知度の高さは、時にアプローチをより困難なものにします。しかし、クライアントの考え方や商品そのものを深く掘り下げることから、見えてくるものは必ずある。ブランドや商品の価値を正しく見出し、キャラクターという企業の大切な資産を活かして立体的にアプローチする――そうした大広チームの理解力・構築力が、プロジェクトの成功につながった好例といえます。
まとめ
誰もが知っている《男梅》ブランド。その認知度の高さを購買につなげるために、「味を知る」「食べてみる」ことにフォーカスしたプロモーションを提案。既存のCMキャラクターを全方位的に活かしきるアイデアで、ユーザーを巻き込んだムーブメントを生み出しました。その背景には、企業のものづくりの姿勢を深掘りして読み解き、商品の価値を再構築した大広チームの着実な取り組みがありました。



