ダイレクトマーケティングで申込数を増やしたい。だけど、購入してもらえない、続けてもらえない、サンプルの原資ばかり膨らむ…。こんな悩みを抱えている通販企業は少なくありません。
実はこれ、ダイレクトマーケティングでよくあるパターン…。
目先の申込数しか考えずに広告を展開したせいで、失敗している可能性があるのです。
大切なのは、リピート=買い続けてもらうことです。
そこで本コラムでは、顧客との対話から継続してもらうためのフォロープログラムを組み立てる方法を紹介。フォロープログラムは単純に購買ポイントを設ける仕組みではなく、顧客の成功・顧客との関係性の継続のために顧客価値を感じ続けてもらうステップの設計です。ダイレクトマーケティングを成功させるヒントとしてぜひご活用ください。
目先の申込数より、“買い続けてくれる顧客”が重要!
ダイレクトマーケティングでビジネスを拡大していくために大事なことは、何だと思いますか?
答えは、申込数を増やすことばかり考えるのではなく、ローンチ前の段階から継続してくれる顧客を明確にしていくこと。その顧客が買い続けてくれる理由=顧客価値を知り、その価値を最大限に高めていくことです。
たとえば、通販向け新商品を発売する場合で考えてみましょう。
まず、多くの企業は顧客リストを入手して、そのリストに対して広告を展開し、新規顧客の申込数を上げようとするでしょう。
新商品の申込数を上げるため、広告に「初回半額」「無料サンプル差し上げます」「今なら500円でお試し」というように、お得感のあるオファーをつけるはずです。
その結果たくさんの申込がきたら、成功した!と考えるでしょう。しかし、本当にそうなのでしょうか。
上記のようなオファーのついた広告を見て、どんな人たちが申し込んでくれるか?というと…
① 本当にその商品・サービスを試してみたい人
② サンプルが欲しい人、安いから申し込む人申し込んでくれた人の多くが、②のような人たちばかりだったら喜べません。なぜなら、②の人たちに「次から定価で買ってください」といっても買ってくれない可能性が大きく、結局サンプルを差し上げるだけで終わってしまうからです。
無料サンプルは原価がかかるし、初回半額などの割引も負担となります。お金をかけて②のようなサンプルゲッターしかつかめないのは、最悪のパターンです。
通販ビジネスを成長拡大させるためには、目先の申込数だけを注視するのではなく、申し込んだあとに定価でも購入してもらえる理由、継続購入してもらえる理由を把握することが欠かせないのです。
申し込みだけで終わる人と、続けてくれる人は何が違うのか?それをローンチ前からしっかりと調査しておきましょう。
“買い続けてくれる顧客”はどうやって見つけるのか?
では、申し込み後も継続購入してくれる顧客を見つけるためには一体どうすればいいのでしょうか?
その方法の1つがローンチ前に行う調査、HUT(ホームユーステスト)です。新商品や新サービスをモニターに試してもらい、感想や意見を聞いていきます。
従来のHUTでは、新商品の使用感をインタビューして訴求点を炙り出すのが目的でしたが、それだけでは新商品の良し悪ししかわからないので不十分です。
これからのHUTは、下記の3点を知ることを念頭において実施しましょう。
- どんな顧客が継続利用してくれるのか?
- 顧客が継続したいと思うポイントは何か?
- 続かなかった理由は何か?
また、モニター調査は短期間で終わらせるのではなく、できれば何か月間か継続すると顧客の心理の変化なども知ることができるのでおすすめです。
調査後の資料を1つ1つ読んでいくと、顧客のいろいろな声が見えてきます。
- 「サンプルでお試しはするけど購入しない理由」
- 「お試し後に購入したいと思った理由」
- 「続けてみて良かった理由」
- 「使用後、周囲にこう言われた」
- 「使い始めて気持ちがこう変わった」
- 「〇カ月間続けたけどやめようと思った理由」
ローンチ前のHUTでできるだけ多くの顧客の声を集めることにより、どこでキャズムが生まれ、どこで顧客のモチベーションが下がるかがわかるようになるはずです。
こうした調査を通して顧客との対話をていねいに行うことで、より効果的なフォロープログラムを設計することが可能です。
顧客の声を、販売戦略にどう活かすか?
では、実際にHUTで得た顧客の声を利用して、どのようにフォロープログラムを組み立てればいいのでしょうか?
フォロープログラム設計のポイントをまとめると、下記のようになります。
- 継続利用したいと思うポイントを踏まえ、小さな成功体験を得やすくする設計
- 継続したいと思うポイントはどのタイミングで得やすいのか(時系列)
- 続かなかった理由=キャズムを乗り越えるためのフォロー
- 続かなかった理由=キャズムはどのタイミングで生まれるのか(時系列)
※キャズムを乗り越えるためには、どんなことがあって意欲が下がったり上がったりするのかを把握するのがポイントです。
では、とある男性用美容商品を例に挙げて具体的に説明してみましょう。
この商品はのちのちのフォロープログラム設計のことまで考えて、ローンチ前からHUTを行っていました。以下はモニターから得られた声の一部です。
こうした声を見ると、この商品は短期間の使用でも実感してもらえる商品だとわかります。まずはこれらの“小さな成功体験”を得やすくするために、フォローツールを制作すればいいでしょう。
その一方で、下記の声のように、最初から価格がキャズムとなっている人もいました。
価格というキャズムを乗り越えるための“価値”をどうやって作ればいいか、考える必要があるでしょう。
また、「継続購入してもらう」という視点で見ると、以下のような声は非常に重要だといえます。
自信を取り戻したい、周囲の目が気になると思っている男性がいるという事実は、商品の使用感を聞くだけのHUTでは得られなかった声ではないでしょうか。
これらの声を受けて、たとえば「肌体感の先にどんな成果が見られるか」という内容のフォローツールを制作し、適切なタイミングで投下するのも有効です。
さらに、数カ月継続したのに途中でやめるという声も…。
この場合には、その期間より少し先まで続けた人の成功体験の紹介や、その効果を体感できるような機会を提供するコミュニケーションも考えられます。
このようにローンチ前のHUTで顧客の声をしっかりと深堀りしておけば、「継続してもらう」ためのコミュニケーション、すなわち効率の良いフォロープログラムの設計が可能となるのです。
なお、ローンチ後の商品の売り上げが芳しくない場合は、定量調査だけでなく定性調査を行って顧客の声をしっかり拾い上げ、方向性を修正していけばいいでしょう。
自分自身の顧客体験もビジネスに活用せよ
これまで述べてきたように、ダイレクトマーケティングでは顧客の声を調査することが何よりも重要ですが、それと同時に、コミュニケーション施策を行う側の一人ひとりが実際の顧客の立場で顧客体験をすることもとても有益です。
どんな会社の社員であっても、みんな仕事が終わればどこかの店や何かのサービスの顧客です。近所のスーパーでも電化製品でもサブスクでもかまわないので、ぜひ、自分が顧客の立場で利用した際に「これは良い」「ここはイマイチ」と思ったことをインプットし、ときどき振り返ってみてください。
自分自身が意識して顧客体験をすることで、
- なにが喜ばれるのか?
- どの点が、いつ、キャズムになるのか?
- どうすれば続けたくなるか?やめたくなるか?
…といったことがわかってくるでしょう。
また、自分の顧客体験を、他の人と共有する場が社内にあれば理想的です。なぜなら、自分が利用しない分野の様々な商品・サービスのことを知ることができるからです。さらに、1つの同じ商品を複数のスタッフで一緒に体験し、意見交換するのもおすすめです。
このように、商品やサービスを提供する側が自ら顧客体験を“蓄積”していくことは、ダイレクトマーケティングを効率よく展開する上での一助となるでしょう。
まとめ
通販ビジネスを成功させるために、まずは申込数を上げよう、そのために有効な顧客リストが欲しい、と考える企業は少なくありません。
しかし、ビジネスの発展はリピートが基本です。フォローの設計をする前に新規活動ばかりに予算を投下し失敗するケースが多々あります。
“顧客に愛され続ける商品・企業”をめざし、ローンチ前から顧客としっかり対話を重ね、「どうすれば継続購入してもらえるのか」を明確にすることで、ダイレクトビジネスのチャンスを広げていきましょう。