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2023.04.04

ブランドの命運を握る「ロイヤルカスタマー」とは? 定義と見つけ方を解説

カスタマー・マーケティングの重要性が提唱されて久しく、どの企業も自社の製品やサービスを購入してくれている顧客の把握に努めていることと思います。しかし、この顧客の把握というのが、実は一筋縄ではいかないようなのです。

たとえば、いま一つの質問をさせていただきたいと思います。
「貴社の製品・サービスに愛着を感じている顧客は、たくさんいらっしゃいますか?」と。
ある程度の実績を重ねてきているブランドであれば、そのブランド担当者や経営者は、「ええ、いらっしゃいますよ」と自信をもって答えられる方が多いのではないでしょうか。少なくとも売上が伸びている状態であれば、なぜそんな当然のことを聞くのか、訝る方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は、顧客がその製品・サービスに愛着を感じているかどうかは、売上額や事業の成長という視点からだけでは見えてこないのです。一体どういうことか、これから「ロイヤルカスタマー」のお話を中心にわかりやすく解説していきましょう。

その事業に必要なのは、優良顧客ですか?ロイヤルカスタマーですか? 優良顧客とロイヤルカスタマー。私たちはこの2つを次のように定義しています。優良顧客は売上と収益に対して貢献度が高い顧客です。とても大切なお客様ですが…。一方、ロイヤルカスタマーは、売上と収益に対して貢献度が高いのは同じですが、大きな違いはブランドに対する心の絆を感じている顧客であることです。ブランドに対する心の絆とは?端的に言えば「共感」とか「愛着」です。そのブランドにどれだけ愛着を感じているか、です。事業を持続させていくには、このロイヤルカスタマーの存在がとても重要かつ必要不可欠になるのです。

優良顧客を維持していくことも難しいのですが、昨今のマーケットのように販売・サービス価格の値上げをせざるを得ない場合はどうなるでしょうか。優良顧客が、価格の安さに最も魅力を感じて購入し続けてきた場合、同じレベルのクオリティなら値上げをしない競合製品にスイッチしてしまう可能性が高いでしょう。そうなると、優良顧客のおかげで積み上げてきた数字が減るのは想像に難くないですね。ロイヤルカスタマーならどうでしょうか。イメージしやすいように、私たちが携わった実際のビジネスから、ロイヤルカスタマーとはどんな顧客なのかご紹介しましょう。

ロイヤルカスタマーって、どんな人?

【ケース1】A社 柔軟剤a

皆さんは洗濯の時、柔軟剤は使っていますか。柔軟剤を使うと衣類がふんわりと柔らかくなって、とても気持ちよく仕上がりますね。しかもキャップ1杯の柔軟剤を洗濯機の専用口に入れるだけ。1回10秒そこそこのアクションです。その仕上がり効果が柔軟剤aの機能価値と言えます。もちろん、同じ機能価値を持つ競合製品もあり、B社の柔軟剤bとは店頭でもTVCMでも競い合っていました。そこにC社の柔軟剤cが「防臭」という新しい機能価値を加えて参戦してきたのです。店頭は顧客を奪い合う激しい戦場となりました。A社としても何か対策を打たなければなりません。そこで私たちは柔軟剤aの現顧客のマインドを参考にしようと調査を行いました。すると思いがけない回答が得られたのです。

ある顧客の母親が昔から柔軟剤aを使っていて、その母親が洗濯してくれたタオルや衣服はとてもいい香りがして、ふんわりと気持ちいい。いつも変わらないこの仕上がりこそ、母親の自分たち家族への愛情だと、顧客は感じていたそうです。だから顧客自身が母親になってからも、家族への愛情の証しとして柔軟剤aを使って同じ香りと同じふんわり感で仕上げているそうです。この顧客にとって柔軟剤aの機能価値が、「母親の家族への愛情」という気持ちの効果=情緒価値まで昇華したと言えます。機能価値のみならず、情緒価値まで感じて購入し続けているユーザーこそ、ロイヤルカスタマーと言えるでしょう。ロイヤルカスタマーが多ければ多いほど、競合製品が新しい機能価値を加えたとしても、顧客の中に確立している情緒価値で打ち勝つことができるのです。

【ケース2】B社 健康サプリメント

B社は様々な健康サプリメントを通信販売しています。競合が苦戦を強いられる中、売上は好調に推移し、拡大し続けています。その秘密はどこにあるのでしょうか。各種サプリメントの機能価値は競合と比較しても大きな差はありません。広告は表現のA/Bテストを基本にPDCAを回しながら、デジタルとグラフィックメディアを運用しています。その次々と展開される広告は通信販売の営業の役割を担っており、売上に貢献していると言えるでしょう。ただ売上を維持するために、もっと重要な施策があります。

一つはサプリメント「売場」でのセールストーク。各コンタクトポイントでの訴求内容です。サプリメントの機能価値を伝えるだけではなく、その機能価値がもたらす情緒価値まで伝えることを基本としています。そのサプリメントが改善してくれる効果・効能を伝えるのはもちろんですが、その先のその人の暮らしや人生の豊かさがどのように広がっていくのかまでも伝えます。ビフォアー・アフターにとどまらない『ビフォー・アフター・アフター』のコミュニケーションです。

二つ目はコールセンターです。運営コストを意識して、受注に必要な顧客情報だけを得て電話を切ることはありません。顧客が気になっていることやご家族のことについて話し相手となり、次回の会話につながるように努めます。顧客との心の距離を1ミリでも縮められるように…。B社はコールセンターをコストセンターではなく、コミュニケーションセンターと位置づけ、ブランドと顧客の絆を、時間をかけてでも育もうとしているのです。こうした施策が功を奏し、競合が新機能や価格で勝負しても、B社のサプリメントと心の絆を感じている顧客は離脱することなく継続して購入しているそうです。まさに理想的なロイヤルカスタマーをB社は育成しているといえます。

ロイヤルカスタマーが持つ2つのロイヤルティ。

ロイヤルカスタマーがどんな顧客なのかイメージしていただいたところで、もう少し深掘りしてみましょう。

ロイヤルカスタマーは製品・サービスのブランドに対して高いロイヤルティを持っています。このロイヤルティは、マインド(心理的側面)ロイヤルティとアクション(行動的側面)ロイヤルティの二つの側面で捉えることができます。ブランドに愛着を感じたり、ブランドの考え方(思想・哲学・世界観・センス)に共感しているユーザーが、マインドロイヤルティが高いと言えます。あるブランドに対してマインドロイヤルティが高くなるほど、継続して購入または利用する意向が強くなり、さらにそのブランドを仲の良い友人や家族に薦める可能性が高くなります。継続購入・利用と他者への推奨活動でブランドを積極的に応援したいというアクションロイヤルティが高くなるのです。顧客の方々がご自身の体験をもとに、ご自身の言葉で友人や家族に推奨してくださるほど強力な援軍は他にありませんね。

ロイヤルカスタマーをどうやって見つける?

繰り返しますが、ロイヤルカスタマーは売上と収益に対して貢献度が高く、かつブランドに対して心の絆を感じている顧客です。そのロイヤルカスタマーを見つけ出すために、私たちは対象となるブランドの顧客調査を行います。購買履歴分析(=行動指標分析)に加えて、ブランドとの心の絆(=情緒的絆)を指標化し分析します。この聞き慣れない情緒的絆の指標化とは、私たちが設定したマインドロイヤルティの6ステージ(実質的には5ステージ)の指標です。

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対象のブランドに関する質問をして、その回答によって6つのステージに当てはめ、顧客のマインドロイヤルティを測ります。「支援」ステージがマインドロイヤルティは最も高いと言えます。また前述した購買履歴分析として一定期間内の購入金額で顧客のアクションロイヤルティを分析します。これらのアクションロイヤルティとマインドロイヤルティで導き出す「ロイヤルティマネージメント」でブランドを評価します。

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アクションロイヤルティが高く、マインドロイヤルティも高い顧客が真のロイヤルティを発揮し、ロイヤルカスタマーと認められるのです。しかしロイヤルカスタマーも永遠ではありません。ロイヤルカスタマー予備軍と呼ばれる層から育てていかなければブランドは存続しません。「ロイヤルカスタマー育成」もまた、これからの企業の重要な課題といえます

いかがでしたか。ロイヤルカスタマーの実像を少しは垣間見ていただけたでしょうか。これからの事業成長においては、ロイヤルカスタマーの存在は欠かせません。貴社の顧客がどのような方々なのか、今一度じっくり見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

■ロイヤルカスタマーは、こんなお客様
・機能価値のみならず、情緒価値まで感じて購入し続けているお客様
・製品・サービスを通じてブランドと心の絆を感じているお客様
■ロイヤルカスタマーの見つけ方
・お客様のマインドロイヤルティを6ステージで測る
・お客様のアクションロイヤルティを分析する
・上記2つのロイヤルティからロイヤルカスタマーを認定

この記事の著者

南 信吾

顧客価値開発本部 顧客育成局 チームリーダー