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2023.02.13

エリアマーケティングの常識を覆す、データマネジメント最前線〈第2回〉顧客理解の深化

土地のエリアデータや人の行動データをより使い勝手の良いものにしていくことで、エリアマーケティングの可能性を広げる。前回はエリアデータや行動データ活用における課題やプロモーション領域におけるデータの利活用についてお話を伺いました。第2回では事業戦略を見据えたエリアデータの利活用について、澤田設計事務所の澤田氏に解説してもらいます。

前回の記事はこちら
エリアマーケティングの常識を覆す、データマネジメント最前線〈第1回〉プロモーションの進化

「市場」「生活者」、そして「顧客」。
エリアデータから理解できることを、事業戦略へ活かす。

前回の振り返りになりますが、エリアデータには様々なものがあります。

土地が持っているデータ:
「国勢調査データ」「都道府県・市町村人口データ」
「自社・競合他社の拠点データ」「エリア別気象データ」など

エリアにいる人のデータ:
「行動データ」「居住データ」「興味・関心データ」
「自動車保有データ」「年収・貯蓄データ」「消費指数データ」など

企業が持っているプライベートデータ:
「顧客デモグラ(居住ベース)」×「購買データ」
「エリア広告に対する反応データ」など

これら様々なエリアデータは単体、ないしは限られた組み合わせにおいて効率的なプロモーションのプランニングなどの単一目的に活用されることがほとんどです。(図①参照)。

図①エリアデータ活用の可能性

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しかしながら私たちは、プロモーション領域だけではなく、エリアデータ活用によって得られる「市場」「生活者」「顧客」の理解を事業発展に役立てることこそが重要なことだと考えています。

――エリアデータを事業戦略に利活用する、とは具体的にどのようなことになるのでしょう?詳しく教えていただけますか?

エリアデータを活用したPDCAを実現することで、大きく3つの段階のことが可能になると考えています。学習塾を例にお話ししてみます。

ステップ1:生徒募集を目的にWEB広告を行いたい。

エリアデータを活用したセグメントを設定したコミュニケーションの基本設計。
 ➡︎アプローチターゲットのセグメント結果を集計して次のプロモーションに活用。

この段階では、特定のセグメント(エリア、あるいはエリアにいる人)に向けて資料請求や無料体験会への参加を募るWEBプロモーションです。時間軸で考えると短期的で、CTRやCPAがKPIになるようなケースです。無料体験などオファーを提示したりして、どのクリエイティブに反応したか、どのターゲットが反応したかによってエリアのポテンシャルをを測る作業ですね。

ステップ2:長く続けてくれる質の高い顧客へアプローチしたい。

セグメント×流入CR訴求検証×遷移先コンテンツ&行動による複合的に分析・設計。
 ➡︎セグメントだけではなく、訴求によるその後の行動も加味して顧客理解を深める。

図②エリア分析×サイト解析

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無料体験などのオファーを提示した広告をクリックした人が顧客になるとは限りません。むしろ離脱するケースの方が高いかもしれませんね。エリアのポテンシャル把握、商圏分析に加えて、見込み顧客がサイト流入後にどう行動しているかを分析すること。

塾で言えばカリキュラムを熱心に読まれているとか、あるいは塾の「学習思想」を閲覧している、リンク先の講師ブログを読まれているとかなどです。オファーで勝負するコンテンツの滞在時間は短く購入まで至ってないけど、上記のようなコンテンツを閲覧し、よりたくさんの情報を収集してくれている。

その行動の“意味性”を考えて、顧客理解を深掘りしていくプロセスがLTVの高いロイヤル顧客へアプローチするためには大切ですし、そうすることでエリアのポテンシャルの測り方、評価の仕方も変わってくるのです。

ステップ3:事業拡大のため新規出店にふさわしいエリアを見極めたい。

コンテンツ遷移後の行動分析により顧客理解をさらに深めて分析・設計(WEBの場合)
 ➡︎遷移状況と遷移後の行動を深掘りすることにより顧客ロイヤルティを見える化。
  エリアごとの特性を加味してエリアポテンシャルを見える化
  (分析にあたってはロイヤルティに寄与する説明変数の明確化)。

図③データをもとにエリアごとの親和性をスコアリング

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学習塾などエリアごとに拠点を構えている企業であれば、事業拡大しやすそうなエリアを見極めたいなど、プロモーションではなく事業戦略そのものにエリアデータを活用したいというニーズもあります。

事業に親和性の高い顧客ターゲットのロイヤリティを、ロイヤルティに寄与する様々なデータ、学習塾であれば「学習思想」や「カリキュラム」などの興味関心データやエリアが持つ特性データなど(説明変数)で重回帰分析し、エリアのロイヤリティをスコア化することで、新店舗開店がふさわしいのか、あるいは既存店を増床する方がふさわしいのかなど、事業計画や投資最適化のための判断をサポートすることができると考えています。

土地が持っているデータを活用することに加え、エリアにいる人の行動データや意識のデータ、WEB広告・サイトのコンテンツなどへの反応など自社しか持っていないプライベートなデータを作り組み合わせることで、エリアデータ活用の可能性はどんどん広がります。

得意先の事業を発展させるために、
エリアデータが持つ可能性をもっと活用していきたい。

複数のエリアデータを活用した分析および活用に関するビジネスモデル特許を取得。

図④澤田設計事務所が保有するビジネスモデル特許

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我々はデータ活用により顧客理解を深め、クライアント事業のビジネスサポートを行っています。顧客理解をさらに深めるために、様々な粒度のあるエリアデータやリアル行動データをどのように組み込むことができるかを日々検討してきました。

そこで、エリアおよびリアルデータを加味して分析する手法を特許申請し、2022年3月に特許庁に承認されました。その内容は、エリアデータを利活用する際の問題とされていた粒度の違いを解決し、データを使いやすいものにしてビジネス活用しようといったものになります。

エリアデータを活用したプロモーションはもとより、エリアごとの戦略的な事業設計にご活用いただければと思います。

複数のエリアデータを分析するためのオリジナル プラットフォームを実装。

図⑤オリジナルプラットフォーム例

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粒度の違う「市」「区」「町」データや「人口」などの行政データ、クリックデータなど複数のエリアデータを一元で可視化できるオリジナルのダッシュボードを実装しています。

澤田設計事務所のエリアマーケティング実装実績。

図⑥自動車販売におけるエリアデータ活用事例(データプラットフォーム)

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図⑦WEBによるエリア広告実施の際の分析事例(広告結果の幅広い活用)

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――エリアデータの利活用について、今後どのような展望が望まれるでしょうか?

様々な得意先のエリアマーケティングや事業支援に携わっていますが、事業設計のためのKPIのはずが、CTRやCTAなどプロモーションのためのKPIのままになっているとか、せっかくの分析が集計どまりになっていたりするケースもあります。

エリアのポテンシャルを適正に理解するには経験値も必要ですし、作業の工数もかかります。マーケティングやデータマネジメントの内製化でできるところは社内で、適切な外部リソースを活用するべき作業は協業しながらエリアマーケティングの新たな可能性を見つけていきたいと考えています。

この記事の著者

澤田 善郎

(株)澤田設計事務所 代表取締役社長

1995年 (株)大広入社
2001年 ダイレクトマーケティングビジネスに携わる ※ダイレクトマーケティング総合研究所を兼務
2013年 DMPを中心としたプラットフォームビジネスに従事
2015年 カスタマーマネージメント局CRMグループ部長
2016年 プロデュース局にてインターナルも含めたトータル戦略設計
2018年 株式会社 澤田設計事務所設立。代表取締役社長に就任。