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2024.01.18

TVCMは、効果を見てPDCAを回す「運用型TVCM」の時代へ

インターネット広告の規模が、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)を抜いたのは2021年。ここ数年は、効果が見えにくいテレビCMより、効果を可視化しやすいネット広告へと宣伝予算を多く割く流れが加速しています。

しかしビジネスが成長し、新規顧客の獲得効率などが鈍化するステージからビジネス拡大を図るときには、コミュニケーション戦略にも進化が必要になります。そこでいま注目されているのが、「運用型TVCM」。時代遅れのマーケティングツール、と思われているテレビCMにいまふたたび風が吹いています。

そこで、数多くテレビメディアのプランニング、バイイングに携わる戸田さん、筒井さんにお話を伺いました。

(お話を伺ったお二人のプロフィール)

戸田順一さんプロフィール写真戸田 順一 
株式会社 大広
メディアビジネス推進局 局長
1990年大広入社。営業職として各種クライアントを担当した後、2016年にメディア部門へ異動。2017年から博報堂DYメディアパートナーズへ関西支社担当代理として出向し、2023年4月に大広へ帰任。同月、大広のメディアビジネスを統括する部門の責任者として現職就任。

 

筒井翔一さんプロフィール写真筒井 翔一 
株式会社 大広
デジタルビジネス局 
統合メディアプランニングチーム 部長
2006年大広に新卒入社。入社後は営業職として各種クライアントのプロデュース業務を経験した後、メディアプランナーに。
2015年には博報堂DYメディアパートナーズのメディアプランニング部門へ出向し、企業のメディアマーケティング戦略立案に従事。
大広復帰後も統合メディアプランナーとして、マスからデジタルまでのオンオフ統合プランニンングや、データ活用によるデータドリブンプランニングなどのメディア戦略立案を担当。

運用型テレビCMが提供され始めた背景

- 運用型テレビCMとは、デジタル広告と同様に、データや分析結果を活用して効果的な配信を行う手法のようですね。このような運用型TVCMが提供され始めたのには、どんな背景があるのでしょうか?

「大きな変換点としてはテレビがインターネットにつながったことでしょうか。リビングのテレビで動画配信サービスを楽しんでいらっしゃる方も多いのかなと思います。テレビがインターネットに接続できるようになったことで、さまざまなデータ分析が可能になりました。配信したデータを分析し運用するといった、デジタル広告が先行していたPDCA手法がテレビCMにも応用されてきて、今ではテレビCMにも投資対効果という指標がとても重要になってきています」

従来のテレビCMと運用型TVCMの違い

- サービスを提供するプレーヤーも多くあると聞きました。効果測定という点では、従来のテレビCMと運用型TVCM、大きく何が違うのでしょう?

「テレビCMの効果測定という視点から見ると、従来のブランディングが主目的であるテレビCMの場合、リーチや認知が効果測定の中心です。フリークエンシー(広告接触回数)やGRP(延べ視聴率)によって、テレビCMや銘柄の認知などの目標KPIがどれだけ上昇するかを測りますが事前調査から計測には一定の時間が必要です。
いっぽう運用型TVCMではリーチや認知といった指標だけではなく「成果」に対してどれだけコミットしたか。企業にとってのKGIとなる売り上げや、中間指標となるサイト来訪や検索リフトといったKPIを評価指標として設定し、テレビCM接触者と非接触者における差分の結果を図り、その比較結果がテレビCMの効果という効果測定を行います。テレビCMの出稿目的は企業によって異なりますが、ここが従来型のテレビCM出稿と大きく異なる点かなと思います。」

運用型TVCMの魅力

広告効果、効果測定できることが企業側にとって魅力なのですね?

「運用型TVCMは、効率を改善し投資のムダをなくしていくこと、効率の最大化を目指すことが本質かと考えています。視聴率などのテレビ出稿データと出稿に対するWEBのレスポンスデータを掛け合わせた効果測定をもとに企業が求めるKPIを検証していけることが魅力だろうと思います。広告出稿した番組の視聴率が良くても、効果測定した結果、求める効果が低ければその広告出稿には価値がない、という判断もしやすいとも言えるかと思います」

運用型TVCMを実施している企業

なるほど。「成果」に対してコミットする運用型TVCMを実施しやすい環境が整ってきたという印象を受けました。ところで運用型TVCMを実施している企業には、どんな企業が多いのでしょう?

「業種としてはさまざまですが、広告効果を可視化したい、KGI、KPIに対して、効果を検証したいというニーズは共通すると思います。デジタルを中心としたマーケティング活動で指標としていたKPIと同じ指標を、テレビCM出稿においてもKPIに設定することが可能となり、同一指標で出稿効果を評価できるという点から、スタートアップ企業などのテレビCMへの参入も多くなってきました。スタートアップのように短期的な成果も追う必要のある企業では、テレビCMは効果が見えづらいとされて敬遠されがちでしたが、改めてテレビCMの効果分析が注目されています。
EC企業やネット型生命保険や損害保険の企業も運用型TVCMのトライアルが増えてきていると思います。大きなキャンペーンで年1回のテレビCM出稿しか打たないというイメージではなく、出稿枠や表現も含めたテレビCMそのものを運用していく仕組みが、ビジネスとの親和性が高いということだと思います」

多様なKPI設定が可能に

テレビCMにおいて、さまざまなKPIが設定可能になってきたということですね?

「さきほどのEC企業やネット損保などデジタルメディアを中心にコミュニケーションしている企業にとっての指標ですと、たとえば「テレビCMを見て10分以内にサイト来訪した人数がどれくらいか」などもあるでしょう。また、量販店や住宅展示場などのクライアントも、運用型TVCMでは来店や来場数などをKPIに設定できるようになってきましたね」

AaaSとは

HDYグループには運用型TVCMを支えるソリューション群、AaaSがあると伺いました。AaaSとはどのようなサービスなのでしょうか。

「AaaS(Advertising as a Service)」とは、博報堂DYグループが提唱する、広告メディアビジネスの次世代型モデルであり、広告産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)として、広告領域のイノベーションを推進しています。我々が手掛ける運用型テレビのシステム基盤は、このAaaSによって支えられています。

AaaSとは何か?

(図1)AaaSとは何か?

従来の広告ビジネスは「広告枠」を売ることが中心でしたが、広告主の事業貢献である「効果」を売り物としたビジネスへと脱却することで、広告の「サービス化」を目指しています。
AaaSの実現により、広告メディア活動全体からみて生じていた「無駄」を排除し、「メディア投資効果」を最大化することで広告主の事業成長に貢献することが可能になります。

AaaSの4つのサービス群

(図2)AaaSの4つのサービス群

AaaSでは、マーケティングレイヤー、テレビ×デジタルレイヤー、テレビレイヤー、デジタルレイヤー、 の4つのレイヤー毎にサービスを提供し、これらを組み合わせることで広告主の事業成果最大化への貢献を目指します。
運用型テレビでは、テレビ×デジタルレイヤーとテレビレイヤー、これら2つのサービスを主に活用します。

AaaSウェブサイト:https://www.hakuhodody-media.co.jp/aaas/

テレビのメディアパワー

あらためてお伺いしますが、テレビが持つメディアパワーって、どんなことでしょう?

「まずいちばんに、運用型TVCMを検討する企業が求めることでもありますが「高いリーチ力」です。新規顧客獲得を拡大させるにはデジタルだけでは一定の歩留まりから拡大しにくいという認識もかなり浸透してきました。そして「メディアとしての信頼性」が高いこと。ブランディングや認知効果が高いことが挙げられます。「視聴の質」や「豊かな表現力」「広告の受容性」などは、デジタルメディアとは一線を画す特徴ですね。運用型TVCMとして、WEB行動をKPIとするデジタル流の効果検証・ PDCA が可能になったことも新たなテレビの魅力、メディアパワーだと思います」

大広の取り組み

最後に。運用型TVCMについて、大広の取り組みについて教えていただけますか?

「テレビCMが初めての得意先、特に中小の得意先には、スモールスタートから始めることをおすすめしており、これら得意先に向けたトライアルパッケージ企画を用意するなどして、セールスを始めています。運用型TVCMでは、実施した広告の効果がどうであったかを、適宜確認、評価したうえで次なるうち手を考え、実施する、というステップを踏むことが大事です。リスクを避ける意味でも、まずは少ない初期投資でTVCMを実施し、その結果を踏まえて枠取りやクリエイティブを修正しつつ、規模を拡大していくのがベターだと考えています。従来からテレビCMを実施している得意先に対しても、運用型TVCMは投資対効果を最大化させる取り組みであり、業態や広告の内容等を考慮しつつ、うまく活用すれば、さらなる事業のスケールアップにつながる、ということを説明させていただいております。いずれにしても、運用型CMは、その名の通り、うまくPDCAを回して「運用」することがカギです。我々大広は、AaaSに基づく確たるシステム基盤、柔軟かつ適切なKPI設定、HDYグループの強力なバイイング力、実績・経験豊かなクリエイティブ力を駆使して、得意先様と一体となって、しっかり伴走したいと考えています」

まとめ

  • インターネットにつながったことでテレビCMは運用型へ。
  • テレビCMの広告効果が測定可能になった。だからPDCAを回していける。
  • メディア投資効果を最大化するAaaSというシステム基盤を活用。
  • テレビのメディアパワー活用で、デジタルだけでは限界が見えてきた新規顧客獲得を。
  • 運用型TVCMは、初期投資を抑えてスモールスタートすることも可能。

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。