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2024.10.15

広告を回避するZ世代へのコミュニケーションとは? ~エナジードリンクZONeの事例~

従来通りの広告アプローチが届いていない。そう感じることはないでしょうか。

コンテンツが多様化し続けている今、とくに10代後半から20代前半のいわゆるZ世代のターゲットにしっかり届く広告施策を実現するのは難しくなっているようです。

それはなぜなのか?どうすればよいか?

今回のコラムでは、エナジードリンク「ZONe」のZ世代を対象とした施策を例に、広告が効かないターゲットに刺さるコミュニケーションの作り方を探るため、大広の若きプランナー上村善太氏と、コピーライターの浅利友菜氏にお話を伺いました。

上村さん2上村 善太
株式会社大広 CXデザイン本部 ブランデッドダイレクト局 第1グループ

2023年入社。コピーライターとして、新規獲得~CRM領域まで幅広く携わる。主な担当クライアントは食品メーカー、銀行、ホームセンターなど。最近の流行やトレンドを意識しながら、Z世代ど真ん中に目線を置いた企画提案を行う。

 

浅利さん2浅利 友菜
株式会社大広 CXデザイン本部 ブランデッドダイレクト局 第3グループ
2019年入社。コピーライターとして新規獲得~CRM領域まで幅広く携わる。主な担当クライアントは製薬会社、インフラ会社、日用品メーカーなど。D2C事業のブランディングに参加する機会が多く、顧客のファン化に向けて継続的なコミュニケーションの企画・実施を行っている。


Z世代は「広告」をスルーする傾向がある

カフェインや炭酸が入って、心身をリフレッシュできるエナジードリンク。
いまや10代後半から20代前半のいわゆるZ世代の生活に溶け込んでいるアイテムといわれ、夜遅くまで勉強したり仕事で気合を入れなければならないときなどに飲む人が多いそうです。

大広が携わったエナジードリンク「ZONe」という商品も、Z世代をターゲットに見据え、若者と相性のよい人気アニメやゲーム関連のコンテンツを使った施策を積極的に行っています。
しかし、Z世代を取り巻く環境は変化が速く、流行っているものや新しいものがどんどん移り変わっていきます。

また、Z世代向け施策としてInstagramYouTubeなどのSNSを活用するのが主流ですが、ただ広告を出すだけでは不十分です。
というのも、Z世代の中には「広告」を表すマークや「PR」というハッシュタグが入っていると一気に気持ちが冷め、商品への興味を失い、スルーしてしまう人が少なくないからです。

 広告に見えないよう工夫しても、投稿内容に違和感を感じたり、文章や写真の撮り方に「広告っぽさ」を感じ広告案件であることをすぐに見抜いてしまう人も。
要するに、従来型の広告のように、企業が伝えたいメッセージを一方的に押し付ける広告コミュニケーションはZ世代には受け入れられにくい…といった方がよいかもしれません。

 エナジードリンク「ZONe」も、Z世代に流行っていることや彼らにアプローチできる新しいアイデアを求めていました。

広告を避ける傾向があるZ世代に、どんなアプローチをすればいいのでしょうか。

大広のプランナー・上村善太氏がたどり着いたのは、「ZONe」の世界観を体感できるゲームコンテンツで楽しませることと、SNSでの拡散を両立した施策でした。

Z世代が拡散したくなる施策とは?

 
Z世代にいま流行っていることをもとに斬新な広告施策を考えてほしいといわれたら、どんなことから始めるでしょうか。
ネット上でトレンド情報や旬のキーワードなどをリサーチしたりするのが一般的かもしれませんね。もちろん、それも有効な手立ての1つでしょう。

エナジードリンク「ZONe」の企画を担当した上村氏の場合、自身もZ世代に該当する年齢であることから、自分の日々の生活や周りの同世代の行動に着目。
同時に、これまでの施策と同様、エナジードリンク「ZONe」と親和性が高いのはやはりアニメやゲームなどではないかと仮定しながら企画を考えていきました。

Z世代というと特別な感じがしますが、カフェ巡りが趣味だったり、洋服が好きだったり、ライフスタイル上ではそんなに特異なものはありません。ゲームが好きな人もたくさんいます。
そんな中で上村氏は、自分も含めた身近な人たちが、スマホにあるゲームを入れていることに気が付きました。

スマホゲームといっても大手メーカーが提供しているようなポピュラーなものではなく、いわゆる「クソゲー」といわれる類のものです。
クソゲーはまるで素人が作ったかのようなシンプルな構成と、チープなクオリティが特徴。
その内容は、たとえば「キャラクターの動作が明らかにおかしい」、「テロップに出てくる日本語の文法が崩れている」、「攻略するのが難しすぎる」などといった問題点があり、普通ならつまらないゲームとされるレベルのものです。

ではなぜ、Z世代の人はこのようなクソゲーをスマホに入れているのでしょうか?

それは、クソゲーの欠点を面白がり、愛しく感じ、会話やSNSなどで誰かと報告し合って楽しむ文化があったからです。
たとえば、「なに、この変な動き」と突っ込んだり、「こんな称号、いらないよ」とつぶやいたりすることで、友人やSNSのフォロワーが興味を持ち、みんなで楽しさを共有する。クソゲーはそんな楽しみ方をされているゲームといえます。

ちなみにZ世代の人びとは、クソゲーを真剣にやっているわけではなく、仕事や勉強の合間、電車での移動時、行列に並んでいるときなど、ちょっとしたすき間時間にプレイするそうです。
「ゲームは本来カッコよくてスタイリッシュなものですが、クソゲーには意図的に仕込まれたおかしな部分があって、そのギャップがクソゲーの魅力になっていると思う」。そう語るのは、同じく「ZONe」の企画を担当したコピーライターの浅利友菜氏です。

クソゲーには肩の力を抜いて遊べる気楽さがあるので、仕事や勉強の合間に気軽にやりやすいのかもしれないですね。
①    誰もが肩の力を抜いてライトに楽しめる
そして、
②    突っ込みどころが多いため言葉でも盛り上がりやすく、拡散されやすい
この2つのクソゲーの特性を活用して生まれたのが、「ZONe」オリジナルのプレイアブルゲーム広告企画でした。

スライド1

ゲームの内容はシンプルで、キャラクターが障害物をよけながら一本道をただ走り続けるというもの。途中に登場するエナジードリンク「ZONe」を拾うとキャラクターがパワーアップして無敵状態になり、3回失敗するとゲームオーバーになります。

スライド3

ドリンクを飲むとパワーアップするという仕掛けがあることで、心身をシャキッとさせる「ZONe」の商品特徴をさりげなく伝えています。

また、ゲーム画面のデザインや演出、日本語テロップなどは、若者から愛されるクソゲーの特徴を意識して意図的におかしな雰囲気も持たせつつ、ZONeのカッコいいブランドイメージも担保しながらしっかりとした作りに仕上げているのもポイントです。

そうすることで、SNS上で面白がられ、拡散されることを狙いました。

スライド4

肝心の広告内容は、ゲーム終了後に出てくるバナーを押すと表示される構造になっているため、広告だからとスルーされる問題も解決できています。
さらに、「ZONe」自身のSNSアカウントでも本ゲームを紹介したため、広告であることを示すマークやPRのハッシュタグをつける必要がなかったのも良かった点ですね。なぜなら、広告のニオイを感じさせずにZ世代にこのゲームを楽しんでもらえたからです。

 実際にローンチ後のSNS上では、否定的な声はほとんど見られず、単純にクソゲーを楽しんでくれる人が多かったとか。たとえば、何度も繰り返し遊んで高スコアを自慢する人や、高得点をとるための攻略法を公開する人、「こんな変な称号をもらってしまった」と面白がる人など、狙い通りの反応が得られたといいます。

また、ゲームコンテンツだったこともあり1人あたりの接触時間が長く、1人ひとりに「ZONe」の世界観をしっかり体験してもらえる施策になったとクライアントからも評価されたそうです。
なお、「ZONe」はもともとゲームを楽しむ人たちに向けて開発された商品ですが、今回オリジナルのプレイアブル広告を作ったという事実から、「ZONeはわかっているね」と印象づけることにも少なからず貢献できたといえるでしょう。

自分の実体験も顧客価値になる

ただ流行っているゲームコンテンツを作ったり、よく使われているSNSを活用したりするだけではターゲットに届くコミュニケーションは完成できません。
なぜそれが流行っているのか?どこがターゲットに刺さっているのか?を探す作業こそが何よりも大切です。

 エナジードリンク「ZONe」の企画の場合、「体験できるゲームコンテンツ(=広告)」と、「クソゲーの欠点を愛でてSNSで拡散する文化」、この2つの掛け合わせるメリットに気付けたことが成功のポイントだったといえるでしょう。

Z世代に限らず、ターゲットとなる顧客は、商品の先だけでなく、SNS上にもいるし、自分のまわりにも存在します。
上村氏のようにターゲットである自分自身の感覚や体験はもちろん、自分のまわりにいるターゲットになりうる人たちとの会話やライフスタイルに意識を向けて、顧客価値のヒントを探すのも一手です。

 ことZ世代に関しては、インフルエンサーの影響よりも、身近な友人・知人やフォローしている人の意見に影響を受けやすく、「いいね」と共感したことを拡散し、さらに多くの人と楽しみを共有するのを好んでいるようです。
逆に言うと、まるで広告のように意見を押し付けてくるインフルエンサーはやや遠い存在…といえるかもしれませんと語る浅利氏。

広告をスルーしがちなZ世代に対して、オリジナルのゲームコンテンツを提供した本施策は、拡散しながら楽しみを共有したいというZ世代の顧客価値を実現した方法であり、Z世代に合ったコミュニケーションの1つだったといえます。

浅利さん・上村さんツーショット

 

まとめ

SNS上で「広告」とひと目でわかる投稿に拒否感を感じやすいZ世代。どんなメディアを使って、どんなアプローチをすればよいか、迷うことも多いかもしれません。

Z世代に限らず、どんな世代にも言えることですが、ターゲットの流行を上辺で追いかけるのではなく、ライフスタイルや考え方にまで目を向けて、彼らに刺さるポイントを丁寧に探っていくことが大切ではないでしょうか。

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。