顧客価値指標
顧客価値指標とは、(株)大広が独自に開発した、「顧客がブランドに感じている価値=『顧客価値』」を数値化し、分析可能にしたものです。企業のマーケティング活動で、ブランドに賛同し、買い続けてくれる「顧客」の存在はますます重要になります。この指標は、顧客からの視点で、ブランドの価値を可視化することを目的としています。
1. 顧客価値とは
「モノ消費からコト消費へ」と言われているように、顧客の願いや欲求は、モノの豊かさからコトの豊かさへと変化してきました。ブランドの評価も、モノの機能や仕様、サービスのメニューにとどまらず、顧客がどんな体験をしたかによって評価されるようになっています。
ブランドを通して顧客が体験すること、つまり「顧客体験」「ブランド体験」に対して、顧客がどのような価値を感じるかが非常に重要になってきているのです。
大広では、この価値のことを「顧客価値」と呼んでいます。
顧客価値は、その顧客にとっての価値、つまり顧客が認める価値を意味します。顧客が認める価値の対象は、モノやサービスが提供する効用だけではありません。企業の持つ思想や理念、社会との向き合いも対象となります。
顧客価値とは、企業と顧客と社会をつなぐ真ん中にある価値であり、顧客がそのブランドに賛同する理由と捉えることができます。
2. 顧客価値を測る
大広は、「顧客価値を積み重ね、ブランドの価値をつくる」ことをクライアントサービスの根幹に置いています。
ブランドを通して顧客が体験することがますます重要になってきている中、ブランドが提示するビジョンをブランドの活動としてどのように顧客に体験してもらうか。その鍵は顧客価値にあります。
ブランドの活動は、商品開発、広告、イベント、プロモーション、店頭、ダイレクトメール、コールセンターの対応から、事業開発、採用活動、社員一人ひとりの言動まで、顧客との様々な接点に及びます。ブランドのすべての活動を、顧客の心理や感覚に響く体験になるようデザインし、そのような体験が積み重なることで、ブランドの価値がつくられていくのです。
そのために、大広ではこれまで、インタビューやコールセンターVOCなどを通して顧客の声を定性的に分析し、顧客価値の把握を行ってきました。
「顧客価値指標」は、顧客価値を数値化し、定量的に把握するものです。一定基準のもとでブランド間の比較や、時系列比較をすることで、KPIとして追い続けることを可能にしています。
3. 顧客価値指標
「顧客は、どのような価値を感じて、どのくらいの大きさで賛同しているのか。」これを数値で表したものが顧客価値指標です。
まず、「どのくらいの大きさ」。つまり、顧客はどのくらいの大きさの価値を感じているか。顧客はどのくらいの大きさで賛同しているか。これらは顧客価値の大きさ、量を測るもの。
顧客価値の量ということで、「Volume of Value、VoV」と名づけました。
一方、「どのような価値」。こちらは、顧客はどんな価値を感じ、認めているか。顧客はどんな理由で賛同しているか。
これらは顧客価値の意味、質を測るもの。
顧客価値の質ということで、「Quality of Value、QoV」と名づけました。
意味(QoV)を抽出し、大きさ(VoV)を測定する。
顧客価値指標は、この2つで構成される指標です。あらゆるカテゴリーに対応する汎用的、かつ簡単なアンケート調査によって指標化します。
4.顧客価値の大きさ|VoV
より大きな顧客価値を感じている顧客は、そのブランドへの信頼も高く、そのブランドを指名買いします。つまり、そのブランドへ高いロイヤルティを持っていると言えます。
VoVの測定にあたっては、ブランド・ロイヤルティを、マインド(心理的側面)とアクション(行動的側面)で捉えます。
マインド面でのロイヤルティとして、
マインドロイヤルティ
- このブランドに対して愛着がある
- ブランドの考え方(思想・哲学・世界観・センス)に共感している
と設定。
アクション面でのロイヤルティは、継続意向と推奨意向の2つに分け、
継続|リピート
- 今後も購入・利用し続けたい
- 次回、このカテゴリーを利用する場合、このブランドを第一候補にする
推奨|プロモート
- このブランドを仲の良い友人や家族に対して薦める可能性が高い
- このブランドを長く使い続けられるように、積極的に応援する
と設定しました。
顧客ひとりひとりのマインドロイヤルティ、継続、推奨の度合いをアンケート調査で聴取し、それぞれMind Loyalty Score(MLS), Repeat Score(RS), Promote Score(PS)としてスコア化。このMLS, RS, PSの合成値として、顧客ごとにVoVを算出します。
VoV・MLS・RS・PSについて算出した顧客ひとりひとりの値から、顧客全体の平均値を求め、ブランドのVoVとしてアウトプットします。
5.顧客価値の意味|QoV
90年代以降、多くの市場において模倣や同質化が進行し、製品の品質を高めるだけでは差別化が難しい状況の中、“顧客が知覚する価値”に着目した研究が行われてきました。
その研究結果として、顧客は品質と価値を区別して知覚しており、企業が顧客満足および再購買意向を促すためには、品質だけでなく、価値を高めることが重要になるということが言われています。
また、 “顧客が知覚する価値”は、機能的価値と意味的価値という大きく2つに分類することができます。
機能的価値は、商品・サービスの技術的性能や実用性に対して知覚する価値。
意味的価値は、商品・サービスについて経験する楽しさ、美しさ、非日常感、優越感などに関する価値です。
このような先行研究で提示された3つの価値モデル「Holbrookのcustomer value model」「Shethのconsumption value model」「Mathwickのexperiential value model」をもとに、大広はQoVを構成する8要素を設定しました。
出典)平成30年度北海道大学大学院経済学研究科博士論文「顧客価値尺度の開発と検証」高橋史早
まず、どのくらいの度合いでこれら8要素を感じているのかをアンケート調査で聴取し、顧客全体の平均値を算出します。
そして、「8要素それぞれに感じている価値の合計が、ブランドに感じている価値の大きさVoVになる」という考えに基づき、QoVの8要素の合計値がVoVの値に等しくなるようにアウトプットしていきます。
6.VoV , QoVの見方
VoVについて
それでは、ここまで説明してきたVoV(Volume of Value)とQoV(Quality of Value)について、その見方を説明していきます。
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VoVトップはブランドB。ブランドBは、MLS(Mind Loyalty Score)愛着共感とPS(Promote Score)推奨が非常に高く、これが顧客価値の大きさにつながっている。
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ブランドB のRS(Repeat Score)継続はVoV2位のブランドAとほぼ同じ。
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MLS愛着共感では、ブランドA,C,Dがほぼ同じ、PS推奨ではブランドA,Dがほぼ同じ。
QoVについて
ここでは、VoVを上げるのに有効なQoVを見ていきます。
図7は、表頭の各ブランドのVoVに対して、表側のどのQoVが寄与しているかを表したものです。VoVを目的変数、QoVを説明変数とした構造方程式モデリングにより、優位性が高いものに★をつけています。★の数が多いほど、より優位性が高くなります。
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このカテゴリーにおいては、品質感(品質が優れている、品質に満足)、審美性(デザインがよい、スタイリッシュ)、娯楽性(非日常を感じる、夢中になれる)がVoVを上げるのに有効である。
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その中で、VoVトップだったブランドBは品質感のみが★★★と際立っており、顧客は品質感を非常に高く評価している様子がうかがえる。
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特徴的なのはブランドDの好印象(ステータスや好印象を得られる)。新たな特徴として、VoV強化に資する可能性がある。
このように、大きさVoV、意味QoVの両面で顧客価値を見ることで、顧客を深く理解し、顧客価値を見つけ、顧客に価値ある体験を提供し続けていくことが可能になります。